抄録
AIDS患者およびARC患者の血清のHIV-1逆転写酵素(RT)に対する影響を検索した.その結果,これらの患者の血清中には, RT活性を抑制あるいは増強する効果をもつ因子が認められた.このことからHIV-1のRT活性に対する患者血清の効果は, HIV-1の感染に関連する現象であることが推測された.さらに,患者血清によるRT活性の抑制因子が,プロテインAと高い親和性を示すことから,この因子はRTと結合し,酵素活性を抑制する抗RT抗体であろうと推測された.
つぎに,標的細胞へのHIV-1の感染に対するAIDSならびにARC患者の血清の中和活性について検討した,その結果, RT活性に対して抑制効果を示すAIDS患者の血清は,有意に高い中和活性をもつことが認められた. RT活性を抑制する抗RT抗体が, HIV-1の細胞への感染を直接に防御する作用があるか否かについては,さらに検討する必要がある.