抄録
母親にSLE,娘にPSSを認める一家系を経験したので報告した.
母親は64歳で,昭和58年4月下肢の紫斑出現, 7月に入院となり,血小板減少,白血球減少,ループス腎炎,梅毒血清反応生物学的偽陽性,抗核抗体陽性よりSLEと診断し,プレドニゾロン60mg/日より投与開始した.紫斑は消失し8月退院となったが,その後抗DNA抗体の陽性化,両膝関節痛が出現した.
娘は38歳で昭和59年11月(37歳)より左手近位指節間関節背側の浮腫,関節痛,レイノー現象出現.昭和60年1月ごろより右手にも同様の症状が起こった. 9月に両手指の硬化に気づき,昭和61年5月入院.両手指から前腕にかけての皮膚硬化,指尖潰瘍瘢痕,全身の色素沈着がみられた.抗核抗体は640倍と陽性であった. PSSと診断し,現在消炎剤の投与のみで経過観察中である.
過去の報告例に著者らの症例を加えた14家系につき,その特徴を検討した.
1) 14家系中3家系に重複症候群がみられた.
2) 発端者がPSSである症例が多く,血縁関係では親子発症の頻度が高かった.
3) 続発者に若年発症例が多くみられた.また
4) 本邦報告例では2家系の親子にHLA DRW 11 (5)が認められた.