日本臨床免疫学会会誌
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11 巻, 1 号
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  • 五十嵐 康, 阿部 修三, 黒沢 元博
    1988 年 11 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1988/02/29
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Prostaglandin (PG)は生理的刺激により肺で産生される. PGは即時型過敏性反応に関与し,それゆえ,気管支喘息の病態生理に関与することが示唆されている.しかし,臨床研究において,生体におけるその役割はいまだ明確になされてはいない.今回筆者らは逆相高速液体クロマトグラフィーを用い,気管支喘息患者血漿中PGを多成分同時に分析する有効な方法を開発したので報告する.血漿を9-anthryldiazomethane (ADAM)と一晩反応させた. gel permeation chromatography (GPC)カラムを用いて測定時における妨害物質を除去し, PG-ADAM分画を得た.ついで, octadecylsilyl (ODS)カラムを用い,水-メタノール混合比にグラジエントをつけて, 40°Cで溶出した.励起波長350nm,螢光波長412nmで,螢光光度計を用いて螢光を測定した.検出限界はPGE1, PGE2で約20pg, 6-keto PGF, TXB2で約100pgであった.
  • 岩崎 秀生, 林 正敏, 湯沢 賢治, 大塚 雅昭, 深尾 立, 岩崎 洋治, 中沢 正樹
    1988 年 11 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 1988/02/29
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    黄緑色螢光標識されたラテックスビーズと赤色の螢光色素フィコエリスン(以下PE)で標識された単球特異的とされるモノクローナル抗体,抗Leu-M3を用い,フローサイトメーターによるLeu-M3陽性細胞の貪食機能測定法を開発した.測定法は,ヘパリン加採血した血液500μlに螢光標識されたラテックスビーズ希釈液200μlを加え, 37°Cにて1時間および2時間インキュベートした後,溶血処理にて得られた有核細胞をPE標識抗Leu-M3抗体で染色し, FACS IVにて2カラー分析で測定した.また観察された分画をソートし,非特異的エステラーゼ染色および螢光顕微鏡下の観察により,測定細胞分画の形態的確認を行った.本測定法は従来の方法に比較し,分析に必要な血液が少量ですみ,同時に多数の検体を容易に測定できるという利点がある.本測定法による正常人単球の貪食能は1時間値22.5±8.1%, 2時間値43.3±14.8%であった.
  • 1.正常対照における効果とその特異性について
    脇口 宏, 藤枝 幹也, 松本 健治, 大原 雄二, 倉繁 隆信
    1988 年 11 巻 1 号 p. 15-22
    発行日: 1988/02/29
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Epstein-Barrウイルス特異的キラーT細胞活性に及ぼすinterleukin 2 (0.2U/ml), interferon α (500IU/ml), interferon γ (500IU/ml), OK-432 (0.01KE/ml), indomethacin (1μg/ml)の影響を正常ヒトリンパ球を用いて検討し,以下の結果を得た.
    キラーT活性の増強は測定前日にlymphokine, OK-432を添加した場合にもっとも強い傾向がみられた。10例について,キラーT活性測定8日, 4日, 1日前にinterleukin 2を添加したところ,添加時間に比例してgross % lysis値は上昇したが,非特異的キラー活性の増強が強く, net % lysis値でみた特異的キラーT活性の増強が得られたのは1日前にinterleukin 2を添加した場合だけであった.
    LymphokineとOK-432はキラーT活性測定前日に, indomethacinはキラーT誘導開始時に添加したところ, interleukin 2とinterferon αはキラーT活性を有意に増強させたが, interferon γ, OK-432, indomethacinには増強効果がみられなかった.同種リンパ芽球様細胞, K-562細胞を標的細胞とした場合,あるいは抗体陰性例のキラーT活性はlymphokineによって増強されなかった.
    以上のことから, interleukin 2, interferon αはEpstein-Barrウイルスに特異的なキラーT細胞活性を増強し得るものと老えられた.
  • 横田 美登志
    1988 年 11 巻 1 号 p. 23-31
    発行日: 1988/02/29
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃癌患者30名(stage I: 8名, stage II: 8名, stage III: 6名, stage IV: 8名)を対象として,末梢血,腫瘍局所,および1次, 2次リンパ節内の各“場”での単球-マクロファージ系細胞の病期進行に伴う量的,質的変動を検討した.このためにFlow cytometryを応用した細胞数および貪食能の同期測定法を開発し基礎的検討を加えた.胃癌患者末梢血単球数に病期進行に伴う変動は認めなかったが,その貪食能はstage III, IVの進行胃癌で有意に増加した(p<0.05).一方,胃癌局所マクロファージは病期進行に伴い,胃癌腫>1次リンパ節>2次リンパ節の順の数的減少(p<0.05, p<0.01)を認めたが,マクロファージ貪食能に一定の変動はなかった.担癌の進行に対して末楕血単球は活性の増強により,また局所マクロファージは量的増加により抗腫瘍作用の一翼を担っていることが推測された.
  • 岩橋 正人, 植松 俊昭, 花田 修一, 斉藤 毅, 桑水流 康夫, 大塚 真紀, 島崎 隆, 寺田 有由, 橋本 修治, 櫻美 武彦
    1988 年 11 巻 1 号 p. 32-39
    発行日: 1988/02/29
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    HTLV-1 endemic areaである鹿児島地方における造血器腫瘍および自己免疫疾患の抗ATLA抗体陽性頻度を間接螢光抗体法または酵素抗体法を用いて検索した. ATLL (98.3%), Mycosis fungoides (87.5%), Hodgkin's disease (53.3%), RA (22.7%), SLE (25.7%)の抗ATLA抗体陽性頻度は健常者(17.2%)よりも高かった.他疾患は健常者との間に有意差を認めなかった.したがってATLL発症におけるHTLV-1の関与を確認したがmycosis fungoidesおよびHodgkin's diseaseに関しては臨床診断上の問題が残りさらに検討する必要を認めた. SLEおよびRAの抗ATLA抗体陽性頻度を輸血歴の有無により2群にわけて検討すると輸血群ではSLE 60.0%, RA 44.4%,非輸血群ではSLE 12.0%, RA 7.7%であり,輸血によるHTLV-1感染の可能性が示唆された.今回の検索結果からはATLL, mycosis fungoides, Hodgkin's diseaseをのぞく造血器腫瘍,自己免疫疾患においては輸血歴のあるものをのぞき,その抗ATLA抗体陽性頻度は健常者との間に有意差はなかった.
  • 健常人男性9人の長期観察結果よりみて
    伊藤 哲朗, 大井 洋之, 関 正人, 藤田 宜是, 小島 弘之, 渡辺 静彦, 岡野 喜久夫, 生沢 哲朗, 大森 史彦, 波多野 道信
    1988 年 11 巻 1 号 p. 40-44
    発行日: 1988/02/29
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Total hemolytic complement (CH 50) and the serum levels of C3 and C4 were measured in 9 healthy male subjects for three months every week, in order to demonstrate the intra-individual variation in healthy subjects.
    The mean values of intra-individual physiological variations in 9 subjects were as follows; CH 50: Standard Deviation (SD) 2.0unit/ml and Coefficient of Variation (CV) 5.0%, C3: SD 14% and CV 10%, and C4: SD 15% and CV 12%.
    There was no correlation between CH 50 and the serum levels of C3 and C4. Hypocomplementemia was not seen. Elevated levels of CH 50 were observed in 5 subjects when they showed signs of common cold.
    It may be important in assessing alterations of complement value in various disease states to consider about such intra-individual variations of complement in healthy subjects.
  • 自験55例の臨床病理学的検討
    福田 亙, 里村 由紀子, 笠松 美宏, 小野寺 秀記, 赤荻 照章, 迫 雅美, 原 洋, 林 英夫
    1988 年 11 巻 1 号 p. 45-54
    発行日: 1988/02/29
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    伝染性単核球症症候群(IMS)にはEpstein-Barr virus (EBV)の初感染による伝染性単核球症(IM)とそれ以外の原因で起こるものがある.本邦のIMSは欧米のそれと臨床像が異なるとされているが,その詳細な検討はなされておらず,われわれはその臨床像を明らかにするため以下の研究を行った.
    〔対象と方法〕1982年1月から1985年9月の当院外来および入院患者で末梢血白血球数の10%以上の異型リンパ球増多を示した55名(男31,女24)に免疫螢光抗体法によるEBV関連抗体の検索を行い,その結果から以下の4群に分け,臨床所見を検討した. Groupvl (IM); Early antigen (EA)またはViral Capsid antigen (VCA) IgMが陽性でEBV初感染が証明できるもの. Group 2; VCA IgGのみ陽性でEBVの関与を判断しえぬもの. Group 3; anti-EBV associated nuclear antigen (EBNA)が陽性または全抗体陰性でEBV初感染の関与を否定しうるもの.
    Group 4;麻疹, A型肝炎(HA)などEBV以外の原因が明らかなもの.
    〔結果〕年齢はGroup 1では10歳以下と20歳代に二峰性に分布, Group 2, 3は10歳以下に多かった. Group 1では明らかな白血球と異型リンパ球の増加があるが, Group 3のそれは軽度で,臨床症状もGroup 1は欧米のIMと差がなく, Group 3ではその頻度が低く経過も短い. Paul Bunnel反応(PBR)はGroup 1の27%, Group 3の11%が陽性, Mono Spot Test (MST)陽性率はGroup 1, 2, 3で各82%, 77%, 33%であった. HAの肝機能はGOTとγ-GOTの増加が主で, IMではアルカリフォスファターゼとγ-GPTが増加, Group 3ではその変動が小さかった.免疫グロブリンはIMでIgEを含めすべて増加, Group 2, 3ではその増加は軽度でIgEにはみられず.リンパ球表面マーカーの検索では全群でOKT 4/8比の低下がみられ, IMではOKTIa 1陽性細胞が増加していた.
    〔考案と結論〕本邦のIMSで, IMはGroup 1とGroup 2の一部であると考えられ,全症例の1/2にみたず,その臨床像は10歳以下にも好発することを除き欧米のIMと同様であった. IMの肝機能障害は胆道系酵素の上昇が主でその組織学的変化と合致した.免疫グロブリンはIMですべて増加しとくにIgEでは薬物過敏やFc-ε受容体発現との関連が示唆された. EBV以外によるIMSが全症例の1/2以上で,さらにその1/2以上を占める原因不明のIMSは10歳以下の小児に多く, IMに比し症状,検査所見は軽微でIgE増加はみられない. MSTはIMに必ずしも特異的ではないが,その診断に有用であった.
  • 高後 裕, 笹川 裕, 蟹沢 祐司, 坂牧 純夫, 野尻 秀一, 上野 芳経, 池田 晃, 新津 洋司郎, 漆崎 一朗
    1988 年 11 巻 1 号 p. 55-62
    発行日: 1988/02/29
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    ヒト末梢リンパ球にr-IL 2 (TGP-3,武田薬品)を通常臨床パイロット試験に用いられている濃度の2U/mlで添加,培養するとその細胞障害活性(lymphokine activated killer, LAK活性)は4日以内に発現し10日まで持続した.
    これらLAK活性とNK活性の異同を, dimethyl sulfoxide (DMSO), ethyl alcohol (EtOH), nordihydroguaiaretic acid (NDGA)などのlipoxygenation阻害剤を用い,各種r-IL 2濃度で検討したところ, NK活性はこれらにより著明に抑制されるのに対し,高濃度のr-IL 2(2U/ml)で誘導されたLAK活性に対するlipoxygenation阻害剤の効果は軽度であり, NK細胞とは異なった細胞障害機構の存在が考えられた.一方,低濃度のr-IL 2 (0.02U/ml)で誘導された細胞障害活性はNK活性と同様にlipoxygenation阻害剤で著明に抑制され, NK lineageの細胞障害機構を持つものと考えられた.
  • 吉尾 卓, 行山 康, 吉田 健三, 野口 英世, 廣瀬 俊一
    1988 年 11 巻 1 号 p. 63-70
    発行日: 1988/02/29
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    in vitroにおいて癌細胞が抗原抗体反応の関与なしに直接補体代替経路を活性化することが報告されている.一方,全身性エリテマトーデスおよび慢性関節リウマチに出現する胸膜炎の胸水中の補体成分が低下しており,その原因として免疫複合体などの補体活性化物質が胸腔内に存在し,補体系を活性化するためであると考えられている. in vivoで癌細胞が補体系を活性化しているかどうかを検討するために癌性胸膜炎患者の胸水中の補体系についての解析を行った.対照として感染性胸膜炎患者群,漏出性胸水患者群を用いた.胸水中の補体価(溶血補体価,補体成分濃度)が低下している場合,血中から胸腔内への補体成分の移行が低下していることによる可能性を否定するために,胸水中の補体価を血清中の補体価で除し,さらに胸水補体価/血清補体価比を胸水アルブミン濃度/血清アルブミン濃度比で除した.癌性胸膜炎患者の胸水中の溶血補体価, C4濃度, C3濃度は他の2群に比べて有意に低下していた. C1q濃度については感染性胸膜炎患者に比べて有意に低下していた.補体活性化の程度を反映するC3転換物質(C3d)をdouble-decker rocket-immunoelectrophoresisを用いて測定したところ,癌性胸膜炎患者は感染性胸膜炎患者と同様に漏出性胸水患者に比べて有意に亢進していた.癌性胸膜炎患者の胸腔内においてはfactor BではなくClqおよびC4が低下していることより主に補体古典経路が活性化されていることが示唆された.癌患者において血中および胸水中の免疫複合体が検出されている.癌性胸膜炎患者の胸腔内に免疫複合体が存在し,補体系を活性化している可能性もあるため,胸水および血中の免疫複合体を測定したが検出し得なかった.さらに胸水中の抗補体活性の有無を調べたがそれも認められなかった.肺癌患者の腫瘍組織および胸水中から分離された免疫グロブリンが肺癌細胞に結合することが報告されている.そして補体古典経路の活性化はほとんどが抗原抗体反応に依存している.これらのことより,癌性胸膜炎患者の胸腔内においては癌細胞に対する抗体が癌細胞表面に結合することにより補体経路とくに補体古典経路を活性化していることが示唆された.
  • 大石 勉, 有賀 正, 崎山 幸雄, 松本 脩三
    1988 年 11 巻 1 号 p. 71-79
    発行日: 1988/02/29
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    ヒト末梢血リンパ球のヒツジ赤血球に対する抗体産生は,抗原によるin vivoの前処理を必要としない一次免疫応答によるin vitro抗原特異的抗体産生系と考えられている.そこでわれわれは, IL 2 レセプターに対するモノクローナル抗体anti-Tacとhuman recombinant IL 2をこの抗原特異的抗体産生系に添加し,ヒト末梢血リンパ球によるin vitro特異抗体産生にIL 2およびIL 2 レセプター機構がいかに関与するかを明らかにするべく実験を行い,ヒト一次免疫応答によるin vitro抗原特異的抗体産生系におけるIL 2およびIL 2 レセプター機構の存在を初めて明らかにし, IL 2による著明な特異抗体産生の増強を認めたのでここに報告する.
  • 杉山 隆夫, 小池 隆夫, 今泉 照恵, 松村 竜太郎, 高林 克日己, 末石 真, 冨岡 玖夫, 吉田 尚
    1988 年 11 巻 1 号 p. 80-85
    発行日: 1988/02/29
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    われわれは蛋白漏出性腸症を伴ったシェーグレン症候群の1例を経験した.症例は47歳の女性でシェーグレン症候群と診断された後に,浮腫で蛋白漏出性腸症を発症し,慢性甲状線炎も合併していた.血清アルブミンは1.6g/dlと著減し,総コレステロールは252mg/dlと増加していた.肝・腎機能は正常であり,尿蛋白は0.2g/日以下であった. 125I-PVP試験の結果,蛋白漏出性腸症と診断された.内視鏡下生検では腸管粘膜固有層の浮腫・円形細胞浸潤・リンパ管拡張・毛細血管壁へのC3・フィブリノーゲンの沈着が確認された.プレドニゾロン投与によって,症状・検査所見の改善がみられたが,治療後にも腸管のリンパ管拡張は存在していた.本症例での蛋白漏出性腸症の原因は腸管リンパ管拡張ではなく,腸管での毛細血管の透過性亢進にあると考えられた.
  • 菅原 正弘, 熊谷 安夫, 橋本 博史, 廣瀬 俊一
    1988 年 11 巻 1 号 p. 86-92
    発行日: 1988/02/29
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    母親にSLE,娘にPSSを認める一家系を経験したので報告した.
    母親は64歳で,昭和58年4月下肢の紫斑出現, 7月に入院となり,血小板減少,白血球減少,ループス腎炎,梅毒血清反応生物学的偽陽性,抗核抗体陽性よりSLEと診断し,プレドニゾロン60mg/日より投与開始した.紫斑は消失し8月退院となったが,その後抗DNA抗体の陽性化,両膝関節痛が出現した.
    娘は38歳で昭和59年11月(37歳)より左手近位指節間関節背側の浮腫,関節痛,レイノー現象出現.昭和60年1月ごろより右手にも同様の症状が起こった. 9月に両手指の硬化に気づき,昭和61年5月入院.両手指から前腕にかけての皮膚硬化,指尖潰瘍瘢痕,全身の色素沈着がみられた.抗核抗体は640倍と陽性であった. PSSと診断し,現在消炎剤の投与のみで経過観察中である.
    過去の報告例に著者らの症例を加えた14家系につき,その特徴を検討した.
    1) 14家系中3家系に重複症候群がみられた.
    2) 発端者がPSSである症例が多く,血縁関係では親子発症の頻度が高かった.
    3) 続発者に若年発症例が多くみられた.また
    4) 本邦報告例では2家系の親子にHLA DRW 11 (5)が認められた.
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