日本臨床免疫学会会誌
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経過中びらん性関節炎を生じた全身性エリテマトーデスの2例
田原 亨安田 正之延永 正
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1989 年 12 巻 2 号 p. 252-258

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抄録
第1例: 38歳,女性.多関節炎,光線過敏症, LE細胞陽性,クームス試験陽性,白血球減少,低補体価,蛋白尿などからSLEと診断され, PSL 30mg/日の投与を受け順調に軽快, PSL 5mgの維持量で良好な経過をとっていたが約10年後左右の手関節と左第2, 3指MP関節に破壊が起こり,リウマトイド因子も陽性であることよりRAの診断基準も満たすようになった.第2例: 48歳,女性.多関節炎,蝶形紅斑,光線過敏症, LE細胞陽性,白血球減少,低補体価などよりSLEと診断され, PSL 10mg/日の投与にて軽快,以後PSL 5mgで順調に経過していたが約6年後左右の手関節と右第2指MP関節にStage IIIの変化が起こり,リウマトイド因子陽性などより, RAの合併も考えられた.
以上の2例はARAのSLEならびにRAのいずれの診断,分類基準をも満足し, SLEとRAのoverlapとも診断しうるが, RAとしては病変が手,指関節に限局しており,少量のステロイド(5mg以下)と非ステロイド性抗炎症剤でコントロールできる程度に活動性が低く,またSLEとしても現在腎障害や低補体もなく,ほぼ5mgのPSLで寛解状態を維持しているくらいにmildである.よって本2症例をSLEとRAのoverlapと老えるよりはSLEの亜型ないしSLEとRAの中間に位置する疾患としてとらえる方が妥当ではないかとの考えを提唱した.
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