日本臨床免疫学会会誌
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抗生物質による薬熱患者の末梢血リンパ球表面マーカーの検討-とくにHLA-DR抗原陽性T細胞に関する検討-
田坂 佳千
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1989 年 12 巻 6 号 p. 599-607

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抄録

臨床的に抗生物質による薬熱と診断された6症例を対象に,末梢血リンパ球表面マーカーの検討をmonoclonal抗体を用いtwo color flow cytometryにより行った.薬熱の発症早期において,活性化T細胞のマーカーとされるHLA-DR抗原陽性(以下HLA-DR陽性と略す)のT細胞(Leu-4+HLA-DR+)が健常成人に比し統計学的に有意な増加を示し(p<0.002: Mann-Whitney U-test),薬剤中止後経過とともに減少を示した.サブセットの解析(5例)では, HLA-DR陽性helper/inducerT細胞(Leu-3a+HLA-DR+), HLA-DR陽性suppressor/cytotoxic T細胞(Leu-2a+HLA-DR+)のいずれもがHLA-DR抗原T細胞の増加に関与を示したが,後者の増加がより優位であった.in vitroで活性化リンパ球のマーカーとして用いられる抗IL-2レセプター抗体を用いsingle color解析を行ったところ,健常成人群との差は認められなかった.そこで, HLA-DR陽性T細胞率が薬熱診断のための新しいパラメーターになりうるか否かを検討するために,臨床的に薬熱との鑑別が問題となる急性細菌感染症患者(15例)について末梢血HLA-DR陽性T細胞の解析を行い比較した結果,薬熱群のHLA-DR陽性T細胞率は統計学的に有意な高値を示した.
以上より,末梢血HLA-DR陽性T細胞は,薬熱診断の新しいパラメーターとなりうる可能性が示唆された.

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