日本臨床免疫学会会誌
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ブシラミンによる腎障害の臨床病理学的検討
永金 知臣小倉 俊郎西谷 皓次棗田 将光原本 俊則佐々木 徹大山 康之槇野 博史平川 秀三鈴木 信也太田 善介
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1990 年 13 巻 4 号 p. 346-355

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抄録
Bucillamine (リマチルR, BU)投与により尿異常をきたした慢性関節リウマチ(RA)患者5例を臨床病理学的に検討した. 5症例は年齢29歳から70歳で,全例女性である. RAの罹病期間は5年から18年, RAのClass, StageまたCRP,赤沈値などにみる活動性はさまざまであった.尿異常としては全例蛋白尿陽性であったが, 5例中4例は顕微鏡的血尿を伴っていた.また2例はネフローゼ症候群を呈していた.尿異常出現までのBU投与期間および投与量はそれぞれ2.5ヵ月から15ヵ月(平均6.1ヵ月), 7.9gから128.0g (平均41.6g)であった.一般検査で肝機能障害など他の臓器障害を示唆する所見は得られなかったが,免疫学的検査にて4例に抗核抗体がspeckled patternを呈し, 2例はBUに対するリンパ球幼若化試験(DLST)が陽性であった.腎機能検査では血清クレアチニンが上昇するような高度の腎不全症例はみられなかったが,尿細管障害を示唆する尿中NAGの上昇, Fishberg濃縮試験の低下をきたす症例が認められた. 4例に経皮的腎生検を施行したが全例膜性腎症の組織所見であり,蛍光抗体法でidiopathicな膜性腎症に比較して補体系の沈着が少ないこと, deposit量が少なくsegmentalな沈着である点が特徴的であった.また,尿細管,間質の変化は認めなかった.ネフローゼ症候群を呈した2例には副腎皮質ホルモンを投与し,他の症例に対してはBU中止のみで経過観察中であるが,現在まで1例を除き蛋白尿は減少傾向であり腎不全への移行例は認めていない. BUは, RA緩解導入剤として開発されたimmunomodulatorであり,腎障害の報告は少ないが,今後その使用に際し,腎障害,とくに膜性腎症の発生に十分な注意を要する.
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