日本臨床免疫学会会誌
Online ISSN : 1349-7413
Print ISSN : 0911-4300
ISSN-L : 0911-4300
13 巻, 4 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 堺 秀人
    1990 年13 巻4 号 p. 307-319
    発行日: 1990/08/31
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
  • 溝口 靖紘, 申 東恒, 河田 則文, 小林 絢三, 森沢 成司, 山本 祐夫
    1990 年13 巻4 号 p. 320-327
    発行日: 1990/08/31
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    免疫原性の強いトリニトロベンゼンスルホン酸ナトリウムをハプテンとして,モルモット肝高分子蛋白分画(LP 1)をキャリアー蛋白としてモルモットをトリニトロフェニール(TNP)化LP 1で感現した.2週間後にTNP化LP 1で感作したモルモットにTNP化した肝細胞を腸間膜静脈よりチャレンジすることにより免疫学的肝障害を誘導した.この免疫学的肝障害モルモットの誘導に小柴胡湯がいかなる影響を及ぼすかについて検討した.その結果,小柴胡湯の投与により免疫学的肝障害モルモットの血清GOT, GPT値は著明に改善された.組織学的にも非投与群ではfocal necrosisからbridging necrosisが中間帯から中心帯領域に認められたが,小柴胡湯投与群では軽度のfocal necrosisのみ認められた.
    以上の結果より,小柴胡湯は本免疫学的肝障害モデルに有効であることが示唆された.
  • 井関 幹郎, 小泉 友喜彦, 小佐野 満
    1990 年13 巻4 号 p. 328-336
    発行日: 1990/08/31
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    日本人健常者の各年齢層における血清IgGサブクラス濃度を測定し,その基準値を検討した. 394例(新生児~成人,男性228,女性166)を対象とし,測定には免疫拡散法を用い測定限界以下の例には酵素免疫測定法を併用した.各年齢層における血清IgGサブクラス濃度の平均およびその±2SDの範囲は,臍帯血, n=30, IgG1 853 (543~1,340)mg/dl, G2 438 (210~648)mg/dl, G3 20 (2~217)mg/dl, G4 24 (2~304)mg/dl, 1歳, n=33, IgG1 733 (311~1,726)mg/dl, G2 161 (~343)mg/dl, G3 27 (3~204)mg/dl, G4 4 (0.4~50)mg/dl, 6~8歳, n=30, IgG1 841 (473~1,496)mg/dl, G2 344 (68~620)mg/dl, G3 26 (4~151)mg/dl, G4 17 (3~109)mg/dl,成人, n=90, IgG1 791 (402~1,556)mg/dl, G2 621 (281~961)mg/dl, G3 28 (3~258)mg/dl, G4 34 (7~161)mg/dlであった.健常者中にIgGサブクラス欠乏症の暫定的診断基準値を下まわる例が存在した. IgGサブクラス欠乏症の診断には慎重な姿勢が必要と思われる.
  • IL-2 receptor, ornithine decarboxylase活性を中心として
    岸 いずみ
    1990 年13 巻4 号 p. 337-345
    発行日: 1990/08/31
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Behçet病患者末梢血Tリンパ球の感作状態を知るべく, mitogenおよび抗原刺激によるIL-2 receptor (IL-2 R)の発現とornithine decarboxylase (ODC)活性の変化を検討した.
    網膜視細胞由来s抗原, Str. pyogenes菌壁抗原によるIL-2 Rの発現とODC活性の変化は明らかでなかったが, PHAで刺激したCD 8+細胞での変化は著しく,一方, two-color分析により, CD 8+ Leu 15-亜群の誘導の異常な亢進を観察した.したがって,何らかのtriggerによるCD 8+ cytotoxic T cell (CTL)の異常な分化・増殖が本症の病変形成に関与していることが示唆された.さらに, ciclosporin (CYA)治療の影響を検討した結果, CYA治療効果の一部はCD 8+ CTLの異常な反応を抑制して病態を修正する作用による可能性があり, CD 8+細胞のODC活性の測定は,他の治療薬剤の選択や評価にとっても有用と思われた.
  • 永金 知臣, 小倉 俊郎, 西谷 皓次, 棗田 将光, 原本 俊則, 佐々木 徹, 大山 康之, 槇野 博史, 平川 秀三, 鈴木 信也, ...
    1990 年13 巻4 号 p. 346-355
    発行日: 1990/08/31
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Bucillamine (リマチルR, BU)投与により尿異常をきたした慢性関節リウマチ(RA)患者5例を臨床病理学的に検討した. 5症例は年齢29歳から70歳で,全例女性である. RAの罹病期間は5年から18年, RAのClass, StageまたCRP,赤沈値などにみる活動性はさまざまであった.尿異常としては全例蛋白尿陽性であったが, 5例中4例は顕微鏡的血尿を伴っていた.また2例はネフローゼ症候群を呈していた.尿異常出現までのBU投与期間および投与量はそれぞれ2.5ヵ月から15ヵ月(平均6.1ヵ月), 7.9gから128.0g (平均41.6g)であった.一般検査で肝機能障害など他の臓器障害を示唆する所見は得られなかったが,免疫学的検査にて4例に抗核抗体がspeckled patternを呈し, 2例はBUに対するリンパ球幼若化試験(DLST)が陽性であった.腎機能検査では血清クレアチニンが上昇するような高度の腎不全症例はみられなかったが,尿細管障害を示唆する尿中NAGの上昇, Fishberg濃縮試験の低下をきたす症例が認められた. 4例に経皮的腎生検を施行したが全例膜性腎症の組織所見であり,蛍光抗体法でidiopathicな膜性腎症に比較して補体系の沈着が少ないこと, deposit量が少なくsegmentalな沈着である点が特徴的であった.また,尿細管,間質の変化は認めなかった.ネフローゼ症候群を呈した2例には副腎皮質ホルモンを投与し,他の症例に対してはBU中止のみで経過観察中であるが,現在まで1例を除き蛋白尿は減少傾向であり腎不全への移行例は認めていない. BUは, RA緩解導入剤として開発されたimmunomodulatorであり,腎障害の報告は少ないが,今後その使用に際し,腎障害,とくに膜性腎症の発生に十分な注意を要する.
  • 柳田 国雄, 竹村 周平, 福田 亙, 岡本 雅之, 土井 たかし, 笠松 美宏, 小野寺 秀記, 上田 正博, 出口 雅子, 杉野 成, ...
    1990 年13 巻4 号 p. 356-364
    発行日: 1990/08/31
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    補体系の動態をより詳細に評価するため,補体系活性化の過程で生じる分解産物(C4d, iC3b, Bb)を,結合織疾患患者において測定し,その臨床的有用性につき検討した.測定は各補体分解産物に対するモノクローナル抗体を用いたELISA法により行った.健常人に比しSLE, RAでは測定したすべての分解産物が, MCTDではC4d, iC3bが有意の高値を示した.またSLEでは溶血補体価(CH50)と各補体分解産物値は相関をせず, CH50高度低下群,正常群で分解産物の有意な高値を認めた.
    種々の結合織疾患においてC3, C4などの蛋白定量やCH50の測定が診断の一助となり,さらにSLEなどにおいては,疾患活動性の指標として利用される.しかしその一方で一部のSLEやRA, MCTDなどで痛感されるように,従来の補体系の検査は必ずしも補体系の動態を反映しているとは限らない.これら補体分解産物の測定は,従来の溶血補体活性とはまた違った意義があり,補体系の関与する病態解明へのアプローチに有用であると思われた.
  • 滝澤 隆, 山本 雅則, 西成田 進, 澤田 滋正
    1990 年13 巻4 号 p. 365-372
    発行日: 1990/08/31
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    膠原病患者(全身性エリテマトーデス(SLE),慢性関節リウマチ(RA),強皮症(PSS),皮膚筋炎/多発筋炎(DM/PM),混合性結合織病(MCTD)の血漿フィブロネクチン(FN)と, RAおよび変形性関節症(OA)の関節液FNをradioimmunoassay(RIA)法で測定した. SLE患者の血漿FN値は正常者よりも有意に高値を示し(603±104μg/ml vs 339±28μg/ml, p<0.01),また活動性SLEでは非活動性SLEと比較して有意に高値を示した(764±135μg/ml vs 377±82μg/ml, p<0.01). RA患者の血漿FN値は469±42μg/mlであり,正常者よりも有意に高値を示したが(p<0.01),臨床的活動性との間に明らかな相関は認められなかった.RA患者の関節液FN値は1,148±224μg/mlであり, RA患者の血漿FN値,またOA患者の関節液FN値(548±60μg/ml)よりも高値を示した(p<0.01およびp<0.05). RA患者における血漿FN値と関節液FN値との間には有意な相関が認められた(p<0.01). PSS,およびMCTD患者の血漿FN値はそれぞれ483±92μg/ml, 1,240±480μg/mlであり,正常よりも高値を示したが, DM/PM患者ではほぼ正常であった(293±72μg/ml).
    以上のことから,血漿および関節液FNの測定は,膠原病の病態の解明に役立つことが示唆された.
  • リンパ球サブセット,幼若化, NK活性,および血清IFN活性について
    米田 和典, 山本 哲也, 尾崎 登喜雄
    1990 年13 巻4 号 p. 373-383
    発行日: 1990/08/31
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    転移がなく予後良好の20例(良好群)と転移あるいは予後不良の20例(不良群)からなる口腔癌患者40例において末血リンパ球サブセット,幼若化, NK活性および血清IFN活性を検討し以下の結果を得た.
    1. 良好群の各サブセット比は健常人と差がなかったが,不良群では健常人と比較してLeu 3 a+8+細胞比が有意(p<0.05)に低率であった.そして良好群では,化学療法,放射線療法に伴いLeu 3 a<8<細胞比が有意(p<0.001)に低下した.
    2. 幼若化とLeu 3 a+8+細胞比との間には相関性(p<0.001)が認められ,不良群の幼若化は健常人と比べ低値であった.
    3. NK活性は患者群と健常人との間に差がなかったが,血清IFN活性は良好群で健常人よりも有意(p<0.01)に高値であった.
    このように,口腔癌患者の免疫動態は臨床状態と関連しており,中でも, Leu 3 a+8+細胞比は患者の状態を評価するうえで有用と考えられた.
  • 大久保 光夫, 海瀬 俊治, 西間木 友衛, 森藤 隆夫, 粕川 禮司
    1990 年13 巻4 号 p. 384-390
    発行日: 1990/08/31
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    不完全型Behcet病にautoerythrocyte sensitization syndrome:自己赤血球感作性紫斑病または自己赤血球感作症候群(以下AES)を合併した1症例を経験したので報告する.
    症例: 53歳女性,昭和42年ころから再発性口腔内アフタ,陰部潰瘍,結節性紅斑様皮疹が出現し, Behget病と診断された.昭和55年,両下腿伸側に出血斑が出現.昭和62年4月ころより両上肢にも皮下出血斑が広がり,再発多発傾向が認められるようになった.その出血斑は,出現の2~3日前に「うずく」ような痛みを伴う.針反応陰性時,自己血液成分による皮内反応を試み,赤血球の皮内反応で陽性所見を得た.とくに,溶血させた赤血球の皮内注射で径40mm×40mmと強陽性であった.さらに内容を分離して皮内反応を試みると赤血球膜成分で陰性,ヘモグロビンでも陰性であり,これ以外の赤血球内容成分の抗原性が疑われた.以上より,本症例は1955年にGardner & Diamondが初めて報告したAESに合致する1例と思われる.
    AESの病因としては,自己血球成分に対するアレルギー反応が考えられている.抗原としてphosphatidylserineやDNAがあげられているが,血清学的に異常所見を呈さない症例が多いため心因あるいは性格に起因する自虐的行為,中枢性の血管反応ではないかとする精神説がRatnoffらによって唱えられている.しかし,本症例のごとくアレルギー素因や精神的素因があり,それに毛細血管の脆弱性とステロイド剤による修飾が加わって血管透過性の亢進および赤血球の漏出と止血の遅延が起こり,組織固定抗体との反応が繰り返されて紫斑が多発するという機序も推測されることから今後,単なる精神説にとどまることなく,アレルゲンの同定や発症機序の解明を目指すことが重要と思われる.
  • 大浪 更三, 菊田 豊, 吉田 晶子, 中川 八重, 鵜飼 克明, 吉田 浩, 西間木 友衛, 森藤 隆夫, 粕川 禮司
    1990 年13 巻4 号 p. 391-400
    発行日: 1990/08/31
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    73歳の女性.昭和54年ころに高熱と多発関節痛があり,その1年後から両膝関節に変形がある.昭和56年から手先に冷感があり,昭和63年から口腔乾燥感および眼乾燥感がみられ,平成元年レイノー現象出現し入院.左右の口腔粘膜頬部に毛細血管拡張があり,舌小帯は軽度に短縮し,両手指にレイノー現象と皮膚硬化を認めた.膝関節X線像にて,皮下軟部組織に石灰化像を認めた.抗セントロメア抗体陽性からCRST症候群と診断された.乾燥性角結膜炎を認め,ローズベンガルテスト陽性,シャーマーテスト陽性,ガムテスト陽性からシェーグレン症候群の合併と考えられた.さらに,上部消化管検査で小弯前庭部にIIC型早期胃癌が診断され,また,胆道系酵素の上昇,高IgM血症,抗ミトコンドリア抗体陽性からPBCが強く示唆された.胃亜全摘を行い,切除胃の病理組織像はIIc型早期胃癌,中分化型腺癌,深達度smであり,このときに採取された肝の組織像はグリソン鞘にリンパ球浸潤, epithelioid cellの集団, granulomaの形成を認め, PBCでScheuerのStage Iと診断された.腫瘍摘出後に好酸球増多は正常化し,抗ミトコンドリア抗体,抗DNA抗体, IgM, IgA, IgG共に低下が認められた. HLA検査ではDR 4とDR 9がみられ,この症例の症状発現の要因の1つと推定された.本症例は,シェーグレン症候群, CRST症候群,無症候性原発性胆汁性肝硬変症と早期胃癌の合併例で,これら4疾患は,シェーグレン症候群に認められる広い免疫異常に関連していることが推察された.
  • CD4+CD45R+からCD4+CD45R-への分化成熟障害が示唆された1女児例
    長沢 正之, 矢田 純一
    1990 年13 巻4 号 p. 401-410
    発行日: 1990/08/31
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    18ヵ月の低ガンマグロブリン血症の女児を報告する.患者は生後6ヵ月より遷延性の上気道感染症を繰り返していた.血清Ig値はIgG 311 mg/dl, IgM 15 mg/dl, IgA 45 mg/dl.ワクチン接種にもかかわらず水痘,ポリオ抗体は陰性であったが,百日咳抗体(IgM)は陽性であった.リンパ球亜群分析ではCD 20, CD 8, CD 4, CD 16陽性細胞数は正常であったがCD 4+CD 45 R+/CD 4+比は増加していた. In vitroでは患児B細胞はSAC刺激に対する増殖反応は正常で, SAC+IL 2刺激でIgG, IgM, IgAを産生した. PWM刺激に対してはIgMを若干産生したが, IgG, IgAはほとんど産生しなかった.混合培養では患児T細胞は健常人nT細胞の抗体産生をヘルプしなかったが,健常人T細胞は患児nT細胞の抗体産生を部分的にヘルプした. PHA芽球化反応は低下していたが, IL 2添加により改善した. In vitroにおいてCD 4+T細胞のPHA+IL 2刺激によるCD 45 R発現の低下現象が健常人に比べ障害されていた.以上のことから,患児ではCD 4+CD 45 R+からCD 4+CD 45 R-への機能的分化の欠陥あるいは遅延があり,そのことが抗体産生能障害である可能性がある.この異常が一時的なものか否かは経過を追って観察する必要があるが, T細胞に原因を有する低ガンマグロブリン血症の病態を理解するうえできわめて示唆に富んだ症例と思われる.
feedback
Top