日本臨床免疫学会会誌
Online ISSN : 1349-7413
Print ISSN : 0911-4300
ISSN-L : 0911-4300
腎血腫と手指・足趾の壊疽で発症し早期治療に成功した多発動脈炎の1症例
竹村 博之坂内 通宏鈴木 雅美加藤 慎二郎松村 高幸湯原 孝典鈴木 博史河野 一郎松井 良樹山根 一秀柏木 平八郎
著者情報
ジャーナル フリー

1991 年 14 巻 2 号 p. 238-244

詳細
抄録

多発動脈炎(PN)は多彩な臨床症状を伴い,早期診断が困難なことが多い.われわれは腎血腫と手指・足趾の壊疽にて発症し,早期診断と治療に成功したPNの1例を経験したので報告する.症例は, 69歳男性.昭和62年8月上旬より,両側の手指・足趾に,チアノーゼと疹痛が出現.その後,発熱を伴い両側の手指・足趾の疼痛は急速に増強し,同月27日緊急入院した.手指・足趾の遠位端は壊疽を呈し,両側の後脛骨動脈と足背動脈は触知せず,心雑音・血管雑音を聴取しなかった.抗核抗体は陰性で白血球は15,800/cmmと増加し,血沈は76mm/1hr, CRPは11.7mg/dlと急性期炎症反応の充進がみられた.胸部エックス線は正常で,血液培養は陰性であった.下肢の血管造影にて足関節付近における動脈の途絶像があり,さらに尿所見(尿蛋白1+,潜血2+),腹部超音波・腹部CT上の腎血腫の存在,腎血管造影における血管炎を示唆する所見(左腎上極の梗塞,微小動脈瘤)などよりPNと診断した.プレドニゾロン60mg/日に加え,プロスタグランディンE1の静脈内投与を行い諸症状は改善した.

著者関連情報
© 日本臨床免疫学会
前の記事
feedback
Top