抄録
SLEにおける肝障害は従来,腎障害の頻度に比較すると少なく,また存在したとしても軽度の生化学的異常にとどまり,病理学的にも脂肪変性,うっ血性変化などの非特異的変化が多いと考えられてきた.しかし, 1956年, Mackayらがルポイド肝炎の疾患概念を提唱して以来, SLEに伴う肝病変と自己免疫性肝炎との異同が問題となり,疫学的,病理学的,病因論的検討がなされてきたが,現在にいたるまで定説を得るにはいたっていない.今回われわれは,多彩な免疫学的異常を呈した慢性活動性肝炎(CAH)の1例を経験したが,本例はARAの診断基準を4項目以上満たし,さらに抗ds-DNA抗体,抗Sm抗体が陽面で,抗平滑筋抗体,抗ミトコンドリア抗体が陰性であるなど, SLEに特徴的と思われる免疫学的異常を認めたため,本例のCAHは,自己免疫性肝炎とするよりも, SLEに伴う肝病変と考えた.