日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-53
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臓器毒性,代謝,毒性試験法等
Pregnenolone-16α-carbonitrileによる lithocholic acid誘発肝障害の防御と脂質レベル 
宮田 昌明外舘 史祥野本 眞博*山添 康
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抄録

内在性物質であるリトコール酸(LCA)は細胞傷害作用や胆汁鬱滞誘発作用を有する遅延性の肝障害誘発物質である。げっ歯類においてLCA誘発肝障害は核内受容体PXRのリガンドであるpregnenolone-16α-carbonitrile (PCN)併用により軽減され、この原因として薬物代謝酵素(hydroxysteroid sulfotransferase (St2a) やCyp3a)の誘導が報告されている。しかしながらSt2aの発現が認められない雄性マウスにおいてもPCNはLCA誘発肝障害を軽減させる。またPCNは脂質合成酵素も誘導し、肝内脂質レベルを上昇させることからLCA誘発肝障害の防御と脂質代謝との関連が考えられる。本研究ではLCAおよびPCNをマウスに処置し、LCA誘発肝障害の防御と脂質代謝の関連について解析した。 C57BL/6N雌性マウスに0.5% LCAを含有する食餌を1, 3, 5, 9日間摂取させた。またLCA処置5日目より腹腔内投与によりPCN(100mg/kg)あるいはcorn oilをLCAと併用した。 病理組織解析、血清の肝障害マーカーの解析からLCA処置日数に依存して肝障害が増強し、PCN併用により肝障害が軽減した。肝内脂質(遊離脂肪酸、リン脂質、トリグリセリド)レベルはLCA処置日数に依存して減少し、PCN併用あるいはPCN単独処置でコントロール群よりも増加した。血清脂質レベルはLCA処置により減少せず、PCN併用あるいはPCN単独処置で遊離脂肪酸とトリグリセリドレベルが増加した。LCA処置により複数種の脂肪酸合成酵素とリン脂質合成酵素遺伝子の肝臓mRNAレベルの減少が認められ、PCN併用により回復した。肝臓のfatty acid synthaseとcholinphosphotransferase 1活性はLCA処置で経時的に減少したが、PCN併用あるいはPCN単独処置でコントロール群よりも増加した。これらの結果はLCA誘発肝障害と肝内脂質レベルの密接な関連を示唆しており、PCNによる肝脂質合成の亢進に起因する肝内脂質レベル低下の抑制が、LCA誘発肝障害の防御に寄与する可能性が示された。

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© 2009 日本毒性学会
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