日本臨床免疫学会会誌
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大量の心のう液貯溜を呈した強皮症の1例
阿部 敬小野 晃裕米沢 和彦登坂 松三得能 徹也矢和田 敦佐々木 茂林 敏昭黒河 聖今井 浩三谷内 昭五十嵐 知文
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1993 年 16 巻 4 号 p. 312-317

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抄録
症例は53歳主婦. 1987年1月乾性咳嗽および呼吸困難が出現.レイノー現象,近位皮膚硬化,色素沈着・脱失,手指の骨吸収像,食道拡張,肺高血圧症および肺線維症よりPSSとして外来加療中であった. 1991年2月発熱,喀痰排出が出現し,咳嗽,呼吸困難が悪化した. Erb領域に心膜摩擦音が出現し両肺背部のベルクロラ音が増悪した.検査所見では低酸素血症,白血球増多,抗核抗体,抗Scl-70抗体および免疫複合体が陽性を示した.補体の低下を認めず,抗セントロメア抗体,抗DNA抗体,抗RNP抗体はいずれも陰性であった.胸部X線,心エコーおよびCTでは肺高血圧症,肺線維症の他に著明な心のう液貯溜を認めた.プレドニゾロン,酸素,利尿剤,カルシウム拮抗剤およびジギタリスを投与し救命しえた.大量の心のう液貯溜を呈したPSS症例はまれで予後不良とされているが,本症例はステロイド剤を含めた保存的療法により救命しえた.
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