抄録
症例は43歳男性,主訴は左踵部痛,発熱.平成5年より左足関節腫脹,自発痛出現.平成9年1月発熱と左踵部潰瘍が出現したため某内科に入院,高血糖を認め糖尿病性潰瘍として治療を受けた.血糖の改善後も皮膚潰瘍の拡大と疼痛増強を認め同年3月某整形外科に入院.抗生剤投与も効果なく,各種細菌培養も陰性であり,精査加療のため当院整形外科に転院.著しい炎症反応を認めたが,潰瘍部の細菌培養は陰性であった. MRIでは足根骨にT1強調で散在するlow intensity area, 骨シンチグラムでも足根骨に集積亢進を認め骨髄炎が疑われた.皮膚潰瘍部の生検では,真皮に炎症細胞浸潤を強く認めた.炎症反応と疼痛の持続から下腿切断が考えられていたが,非感染性であり生検所見からも自己免疫機序の関与を疑いプレドニゾロンを投与したところ,潰瘍縮小消失を認めた.本症例は壊疽性膿皮症に近いと考えられたが骨髄炎の説明は難しく,今後同様の症例蓄積が待たれる.