日本臨床免疫学会会誌
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全身性エリテマトーデスの薬物治療
熊谷 俊一中村 知子
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2002 年 25 巻 1 号 p. 14-20

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抄録

モデルマウスでトレランスの破綻が自己免疫疾患を引き起こすことは証明されたが,ヒトSLEの病因未だ不明である.従っていわゆる原因療法は無く,ステロイドを中心とした非特異的免疫抑制療法が中心である.一方で, SLE患者の生命予後は年々改善しているが,これは早期診断,病型に応じた治療の確立,特殊病型の解明,副作用や合併症対策などによる.
SLEに対する基本的なステロイド療法は,その病型を重症度から分類し,それに応じた薬物治療法を決定する.難治例にはシクロホスファミドの間歇的投与法やシクロスポリンなどの免疫抑制薬が併用される.中枢神経ループスは予後不良の病態とされていたが,画像診断,髄液サイトカイン検査,抗ribosomal P抗体検査などが診断に応用され,予後はかなり改善している. SLE患者の妊娠分娩についても,「重篤な臓器病変が無く, 6カ月以上非活動期が続いている」場合は可能と考えられる.妊娠中の増悪や分娩後の再燃には注意をし,必要充分量のステロイドで対応する.抗リン脂質抗体や抗SS-A/SS-B抗体の妊娠分娩への影響や対応も確立されつつある.
SLEの死因としては,病初期にはSLE自体の病変によるものが多いが,長期的には感染症や血管病変が問題である.ステロイドの長期使用は感染症以外にも,骨粗鬆症による骨折,冠動脈疾患,および白内障のリスクを有意に増加させる. SNPsなどによる遺伝的素因を加味した副作用予防法の確立や個々の患者に対応した新しいステロイド節約療法を樹立する必要がある.
SLEにおいてもサイトカインや接着分子などに対する各種モノクローナル抗体を用いた治療が試みられている.欧米ではSLEを含む難治性膠原病に対して,自己末梢血幹細胞輸注が行われ,かなりの効果をあげている.アロ幹細胞移植が,病因は不明であっても根本的治療法であり,近未来的には一時的に主流となる可能性もある.

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