抄録
症例は74歳女性. 1990年びまん性混合型リンパ腫にて化学療法を受けた. 1998年2月腰痛を主訴に近医受診, M蛋白を指摘され3月当科入院.血清総蛋白9.79/dl, IgG 4530mg/dl,血清免疫電気泳動でIgG, κ, λtypeのM蛋白を検出した.骨髄穿刺検査で異型性のある形質細胞を約25%認め,免疫染色でIgGおよびκ, λが何れも陽性を示したことからκ, λのbiclonalityを示すIgG型多発性骨髄腫と診断した. IgGのサブタイプではIgG 1 56%, IgG 2 43%とほぼ同量みられ,免疫グロブリン重鎖CDR 3領域の検討で複数のクローナリティーを示したことから2種類のクローンの存在が示唆された. MP療法を施行したがminor responseであり,経過中angioimmunoblastic T-cell lymphoma (AILD)を合併した.本例はbiclonal light chainを示す稀な骨髄腫であり,リンパ腫を合併するなど免疫グロブリン産生機序のみならず腫瘍の発生機序を考える上で興味ある症例と考えられた.