日本臨床免疫学会会誌
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長期経過観察をしえたhyper IgE syndromeの一例における臨床像と免疫学的組織学的検討
城 宏輔堀内 清富田 有祐木谷 信行渡辺 直熙城 謙輔今井 健郎松本 文夫
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1986 年 9 巻 3 号 p. 185-196

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抄録
Hyper IgE syndromeの男子例を15年にわたり経過観察し,その臨床像と免疫学的,組織学的所見を検討した.臨床症状は生後3ヵ月に皮膚膿瘍で始まり, 10歳までに肺炎,喉頭炎,爪床炎,膿胸,敗血症,骨髄炎に罹患した.特徴的な粗野な顔貌は9歳のときには認められていた.気管支炎,肺炎は17歳ごろからとくに頻回となり, 23歳ごろには息切れが絶えずみられ,バチ状指となってきた.免疫学的検査では血清IgE値の高値,分泌型IgAの低値,多核球遊走能の低下, DNCBに対する不応,抗ブドウ球菌IgE抗体と抗IgE自己抗体の増加, FcεR+Bリンパ球の増加が認められた.患者白血球はブドウ球菌抗原によりヒスタミンを遊離し,同抗原で刺激された患者白血球浮遊液の上清は多核球遊走能を著しく抑制した.皮膚生検ではマスト細胞のspontaneousな脱顆粒が認められた.これらの所見をもとに,マスト細胞からの化学伝達物質遊離抑制薬であるdisodium cromoglycate液の吸入療法を行ったところ,気道感染症状は著明に減少した.
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