主催: 京都大学大学院医学研究科 内科学講座 臨床免疫学
昨年、我々は、IL-6阻害治療により、急性炎症蛋白であるSAAの正常化が見られる機構を、SAAリアルタイム定量的RT-PCRの系で解析し、複数のサイトカインによるSAAの相乗発現においてIL-6が必須であり、従来関与の言われていなかったJAK-STAT系が重要であることを報告した。しかし、ヒトSAA1のプロモーター領域には、既知のSTAT3の結合領域は報告されていない。そこで、ルシフェラーゼアッセイによるプロモーター解析を行ったところ、STAT3がSAA1の相乗発現に必須であり、NF-κB結合領域を介し、SAA1の相乗発現を誘導することが明らかになった。EMSAにより転写複合体にSTAT3が存在することを確認し、さらに、免疫沈降及びDNA affinity chromatographyにより、STAT3がNF-κB p65と複合体を形成し、NF-κB結合領域近傍に結合することを確認した。さらに、STAT3が転写共役因子であるP300を誘導しSAAの相乗発現に寄与することが明らかになった。以上のことからIL-6阻害治療がSAAを正常化する機構は、NF-κB p65とSTAT3のクロストークを阻害する結果であり、SAAの過剰産生により引き起こされるAAアミロイドーシスの治療にSAAの産生を抑制するIL-6阻害治療が有効であることが転写レベルで裏付けられた。