日本臨床免疫学会総会抄録集
Online ISSN : 1880-3296
ISSN-L : 1880-3296
第35回日本臨床免疫学会総会抄録集
セッションID: S2-1
会議情報

シンポジウム2 免疫機序で語る異分野疾患‐免疫学的病態‐
心血管病態・臓器不全の病態におけるMCP-1の役割解明を基盤とするトランスレーショナルリサーチ
*江頭 健輔
著者情報
キーワード: MCP-1
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

動脈硬化性疾患と炎症:動脈硬化性疾患(再狭窄、急性心筋梗塞、脳梗塞)の責任病変部位において活動性の慢性炎症(単球・マクロファージの接着浸入・活性化)が顕著に生じ、その結果C反応性蛋白や単球走化性促進因子(monocyte chemoattractant protein-1、MCP-1)などの炎症マーカーが上昇することから、同疾患は慢性炎症に起因すると考えられている。
炎症は動脈硬化性病変の新たな治療ターゲット:冠動脈インターベンションは国内で年間20万人に実施されている。再狭窄に対して画期的抑制作用を有する薬剤溶出ステントが登場したが、最近その副作用(遅発性血栓)が懸念されている。一方、急性心筋梗塞の責任病変である「不安定プラーク」に対する確立した治療法はない。 我々は独自に単球/マクロファージのケモカインであるMCP-1の機能を変異型MCP-1(7ND)を用いて抑制することによって再狭窄・動脈硬化が抑制されることを霊長類などの実験動物を用いて明らかにしてきた。これらの成績から、抗炎症が動脈硬化病変の重要な治療ターゲットとなることが明らかとなった。
炎症制御による生体吸収性遺伝子溶出ステントの開発:臨床応用に向けて、7ND遺伝子溶出ステントを開発し、新生内膜抑制効果を明らかにした。また、炎症の成立に中心的役割を果たす転写因子NF-kBを抑制するNF-kBデコイ溶出ステントを創製し、その有効性を確認した。NF-kBデコイをステント治療直後に冠動脈内に投与する臨床試験を行い、その安全性を明らかにした。
結論と展望:炎症が動脈硬化性疾患の成因に中心的役割を果たすこと、抗炎症が動脈硬化性疾患に対する新しい治療対策になることが明らかとなった。また、抗炎症的に働く遺伝子溶出ステントが再狭窄抑制だけでなくプラーク安定化をもたらす「より優れた」「安全性の高い」次世代医療機器となる可能性が示された。

著者関連情報
© 2007 日本臨床免疫学会
前の記事 次の記事
feedback
Top