日本臨床免疫学会総会抄録集
Online ISSN : 1880-3296
ISSN-L : 1880-3296
第35回日本臨床免疫学会総会抄録集
セッションID: S1-6
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シンポジウム1 診療の壁を越える共通語‐IL-6を例として‐
IL-6阻害療法が教えてくれた病態解析と新たな治療への展開
*吉崎 和幸
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抄録

IL-6が多分野疾患に関与することは医師、研究者らによって示されている。ヒト化抗IL-6受容体抗体(トシリズマブ)によるキャッスルマン病、関節リウマチ等への有効な治療結果はIL-6が慢性炎症性疾患の病態形成に中心的役割を果していることを示唆する。本治療はIL-6単独阻害であるため、病態におけるIL-6の意義を明らかにし得ると考えられる。
関節リウマチでは様々な細胞が活性化され、様々なサイトカインやケモカインが産生されて、その結果、例えば急性期蛋白が発現する。この事実を知らない者はいない。しかしながら炎症におけるその発現機序を知る者もいない。今回IL-6分子のみを阻害することによって正常値化したことからCRP及びSerum amyloid A (SAA)の細胞内レベルでの発現機序の解明を試みた。肝細胞を用いたin vitroでの研究ではあるが、あえてIL-6を含む複数のサイトカイン刺激の系を用いて解析した。その結果、これらの急性期蛋白の発現にIL-6が必須であり、特にSTAT3の活性化が中心で、同時にSTAT3の新たな転写機序によって発現することを明らかにした。このことは単にin vitroにおける新たな所見であるばかりでなく、炎症生体内での転写機序の可能性を示唆し、転写レベルでの疾患病態を示していると考えられる。更に転写因子の複合体形成様式から、形成阻害による新たな治療へのアプローチも考えることができる。トシリズマブによる治療では細菌、ウイルスの易感染が1つの不利益である。新たな治療法が可能になればこの問題も解決できるものと思われる。また今やCRP、SAAは単なる炎症マーカーというばかりでなく、慢性炎症の増悪因子でもある。従ってIL-6阻害療法に加えてこの新たな治療が展開されたならばIL-6阻害とは異なる方面からの慢性炎症性疾患への治療の可能性も考えられる。

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© 2007 日本臨床免疫学会
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