主催: 大阪大学保健センター、大学院医学系研究科身体防御健康医学
好中球およびマクロファージにより産生される活性酸素(O2-)は、Innate immunity(自然免疫)における炎症反応の一構成要素である。今回我々は、活性酸素がautocrineの機序でマクロファージ自身の遊走能を促進すること、そのシグナルとしてProtein kinase C(PKC)ζ/RhoGDI-1リン酸化/RhoGTPases活性化経路を見出したので報告する。 (方法)ヒトマクロファージは健常人末梢血のCD14(+)、CD17(-)、CD19(-)、CD45RA(-)、CD56(-)、IgE(-)分画を用いた。細胞株はマウスマクロファージ様細胞株J774.1を用いた。細胞運動能は金コロイド法およびボイデンチャンバー法にて測定した。活性酸素産生能はチトクロームC法にて測定した。PKCzetaの抑制にはミリスチル化ペプチド(myr-PKCζp)、RhoGTPaseの抑制にはC3酵素を用いた。細胞内活性酸素の消去にはN-acetylcystein(NAC)を、NADPH oxidaseの抑制にはdiphenylene iodonium(DPI)を用いた。 (結果)J774.1細胞の運動はSODおよびNACにより抑制され,HPX/XOD(ROS)により促進された.さらにchemotactic peptideであるfMLPによって促進された.J774.1細胞の運動もSOD, NACにより抑制された.このROSによる運動促進シグナルはPKCζ/RhoGDI/RhoGTPasesシグナルにより伝導されていた.ヒト末血マクロファージの運動についても同様な所見が得られた. (考察)マクロファージが炎症局所で運動するのは,自らが産生するROSがPKCζ/RhoGDI/RhoGTPasesシグナルを伝達することによると考えられた.従って, PKCζを分子標的とした阻害剤は慢性関節リウマチなどの炎症性疾患の治療に有用であると考えられる.