主催: 大阪大学保健センター、大学院医学系研究科身体防御健康医学
[背景]後天性血友病は、後天的に凝固因子に対する抗体が産生され、出血傾向を呈する疾患である。今回、抗リン脂質抗体症候群(APS)を合併した難治性の後天性血友病を経験したので報告する。[症例]38歳女性。2006年7月より四肢および殿部に皮下出血が繰り返し出現していた。APTTの著明延長、抗カルジオリピン抗体陽性よりAPSを疑われ当科紹介。抗CLβ2GPI抗体 11.4U/ml、肺換気血流シンチでのミスマッチを認めAPSと診断。凝固系の精査を行ったところ、第_VIII_因子活性 1%、第_VIII_因子インヒビター活性 1450BU/ml、特異的第_VIII_因子結合抗体 0.199mg/dlであったため、APSに合併した後天性血友病と診断しプレドニゾロン(PSL)およびシクロフォスファミド(CPA)の治療を開始した。しかし、APTTは改善せず皮下出血を繰り返していたため、リツキシマブ(RTX)の投与(500mg4回)を行った。その後、PSLとシクロスポリン(CyA)を併用し経過を観察しているが、第_VIII_因子インヒビター活性は1450BU/mlから41BU/mlまで低下し、APTTは徐々に改善傾向にある。[結語]難治性の後天性血友病に対して、PSL・免疫抑制剤(CPA・AZP・CyA)およびRTXの併用療法は有効であった。難治性後天性血友病に関して文献的考察を含めて報告する。