日本臨床免疫学会総会抄録集
Online ISSN : 1880-3296
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第35回日本臨床免疫学会総会抄録集
セッションID: 102
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CD96は白血病幹細胞特異的細胞表面マーカーである
*保仙 直毅杉山 治夫
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抄録

化学療法の進歩にも関わらず、化学療法のみでは治癒に至らしめることができない急性骨髄性白血病患者は多数存在する。それは、抗癌剤が白血病幹細胞に対して十分に有効でないためと考えられる。白血病幹細胞を標的とした治療を開発するための第一歩として白血病幹細胞と正常幹細胞を識別、分離できるようにすることが重要であるが、現在のところ、白血病幹細胞と正常幹細胞はともにCD34+CD38-分画に濃縮されると報告されており、それらの識別は困難である。そこで、本研究では、急性骨髄性白血病患者検体のCD34+CD38-細胞に発現していて、正常骨髄造血幹細胞分画である CD34+CD38-細胞に発現していない細胞表面マーカーを同定することにより、両者を識別可能にすることを目的とした。我々は本研究において、signal sequence trap法を応用することにより、CD96 mRNAが白血病CD34+CD38-細胞において高発現しているのに対して、正常CD34+CD38-細胞での発現は極めて低いことを明らかにした。引き続いて行ったFACS解析では、29例中19例の急性骨髄性白血病において、CD96はCD34+CD38-細胞の多数(74.0 ± 25.3%)に発現しているのに対して、正常 Lin-CD90+CD34+CD38-造血幹細胞ではわずか(4.9 ± 1.6%)の 細胞に弱い発現が見られるのみであった。さらに、急性骨髄性白血病CD96+細胞が機能的な白血病幹細胞を濃縮しているか否かを明らかにするため、FACS-sortしたCD96+あるいはCD96-細胞を Rag2-/- γc -/- 新生児マウスに移植し、マウスin-vivoで白血病細胞が再構築されるか検討した。その結果、5例中4例においてCD96陽性白血病細胞のみがマウスへの生着を示した。これらの結果は、CD96が急性骨髄性幹細胞特異的な細胞表面抗原であることを示している。さらに、今後、CD96が正常幹細胞にはなく白血病幹細胞上には存在する理想的な治療標的となる可能性を示している。

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© 2007 日本臨床免疫学会
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