日本臨床免疫学会総会抄録集
Online ISSN : 1880-3296
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第35回日本臨床免疫学会総会抄録集
セッションID: S2-5
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シンポジウム2 免疫機序で語る異分野疾患‐免疫学的病態‐
移植
*高原 史郎
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抄録

臓器移植・組織移植における究極の目標は、免疫抑制剤なしに移植臓器(組織)が生着する免疫寛容の導入である。現在の非特異的免疫抑制療法での腎臓移植で10年生着率75%、肝臓移植で10年生着(存)率70%、心臓移植で10年生着(存)率70%を達成しているが、意図的に免疫抑制剤を完全に中止して免疫寛容を達成できている症例はごく僅かである。では、このごく僅かの免疫寛容成功例はどのようにして達成したのであろうか?そして将来、意図的に免疫寛容を導入するにはどのような方法があるのか?今回のシンポジウムで概説する。 (1)現在成功している免疫寛容導入法 1)小児の肝臓移植では10%以上の症例で免疫寛容が達成されている。これは肝臓自身が造血組織でもあるため結果的に免疫寛容が導入されている。ただし実際に非特異的免疫抑制剤を中止している症例は少ない。 2)5例の生体腎移植において、以下の免疫抑制メニューで免疫寛容の導入に成功し、かつ長期生着に成功している。1)ドナーからの骨髄移植+2)レシピエント胸腺へのradiation+3)cyclophosphamide(60mg/kgX2)+4)レシピエントへの抗CD20抗体+5)9-14ヶ月間のcalcineurin 阻害剤投与。免疫寛容が達成された患者ではドナーとのキメラ状態が達成されていた。 しかしこの方法では骨髄移植が必要であり、腎移植での普及は困難である。 (2)将来、実用化の可能性のある免疫寛容導入法 1)抗CD28抗体:動物実験において、抗CD28抗体(super-agonist)のみの投与で免疫寛容が成立している。 2)ブタから人間への異種移植における免疫寛容:ハーバード大学のK.Yamadaらの研究グループは、ブタからサルへの異種間腎移植において免疫寛容導入に成功した。

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© 2007 日本臨床免疫学会
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