主催: 大阪大学保健センター、大学院医学系研究科身体防御健康医学
TNFが種々の炎症性疾患、免疫疾患に関与する事が示され、それを標的とする治療薬が開発されてきた。TNF抑制の作用点としては、1)de novo産生抑制、2)mRNA安定性調節、3)細胞からの遊離抑制、4)TNF活性の中和、5)受容体との結合阻害、6)受容体からのシグナル阻害、など多段階での制御の可能性がある。この中で、実際、ヒト疾患に使用され劇的な治療効果をもたらしたのは、標的であるTNFと強力に結合してその活性を抑制する生物学的製剤であった。臨床応用された3つの生物学的製剤、キメラ型抗TNFア抗体インフリキシマブ、2型TNF受容体-Ig融合蛋白エタネルセプト、ヒト型抗TNFア抗体アダリムマブは、関節リウマチ、小児関節リウマチ、クローン病、潰瘍性大腸炎、乾癬性関節炎、乾癬、そしてベーチェット病の眼病変に対する適応があり、さらなる広がりを見せている。製剤による治療効果の差異や特徴を、製剤のPK/PD、作用点、投与ルート、併用薬などから考察し、関節リウマチに対する治療成績を基に議論したい。有効性の予測は臨床的には困難な事が多いが、RNA診断による予測の取り組みや、in vitro TNF産生アッセイ系などの有望と考えられる予測方法について紹介したい。また、感染症など、標的分子の生理的作用と関連した副作用について、それが出現する理論的背景を概説し、日本において行なわれた全例市販後調査の結果をもとに、議論を深めたい。