日本臨床免疫学会総会抄録集
Online ISSN : 1880-3296
ISSN-L : 1880-3296
第35回日本臨床免疫学会総会抄録集
セッションID: Plenary1
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Plenary Lecture
自然免疫における病原体認識システム
*審良 静男
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抄録

哺乳動物には2つのタイプの免疫システムが存在する。1つが自然免疫で、マクロファージ、白血球、樹状細胞などの食細胞が担当し、体内に侵入してきた病原体を貪食し分解する役割をもつ。もうひとつは、獲得免疫で、おもにT細胞やB細胞が関与し、DNA再構成により無数の特異性をもった受容体が作られ、あらゆる抗原を認識する、高次の免疫システムである。自然免疫は、従来まで非特異的な免疫反応と考えられ、哺乳動物においては獲得免疫の成立までの一時しのぎと考えられてきた。そのためこれまでの免疫研究は、獲得免疫に中心が置かれてきた。しかし、最近、自然免疫系の細胞も、Toll-like receptorと呼ばれる受容体を用いて病原体を特異的に認識して、炎症・免疫応答をひきおこすことが判明した。12のファミリーメンバーからなるTLRのそれぞれのノックアウトマウスもすべて作成され、それらの解析からほとんどのTLRの認識する病原体構成成分があきらかとなっている。TLR4 は、LPSシグナル伝達に関わる受容体で、TLR2は、グラム陽性菌のペプチドグリカンやリポプロティンを認識することが判明した。TLR1とTLR6は、TLR2とヘテロダイマーを形成することで異なるリポプロティンを認識する。TLR5は、鞭毛を認識する。TLR7は抗ウイルス剤imidazoquinolinesや1本鎖RNAを、TLR9は細菌やウイルス由来のDNA(CpG DNA)を、TLR3は2本RNAを認識することがあきらかとなった。このように、TLRは、細菌、真菌、原虫、ウイルス由来の成分によって活性化され、あらゆる病原体の体内への侵入を感知する受容体であることが判明した。さらに重要なことは、TLRを介しての自然免疫系の活性化が、獲得免疫の誘導に必須であることがあきらかになったことである。このため、従来の免疫理論の大幅な修正がせまられるようになり、感染症に対するワクチン、アレルギー疾患、癌免疫に対する考え方も大きく変化してきている。最近になって、さらにTLR以外にも病原体の侵入を感知する細胞質内に存在する受容体の存在もあきらかとなった。このように、生体はTLR依存的と非依存的システムを用いて、病原体の体内への侵入を感知し、それに続く炎症・免疫反応を誘導し、病原体に対処している。本講演では、自然免疫系による病原体の認識機構について述べてみたい。

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© 2007 日本臨床免疫学会
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