日本臨床免疫学会総会抄録集
Online ISSN : 1880-3296
ISSN-L : 1880-3296
第35回日本臨床免疫学会総会抄録集
セッションID: Plenary2
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Plenary Lecture
制御性T細胞による免疫応答制御
*坂口 志文
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抄録

正常個体中に存在する制御性T細胞は、免疫自己寛容の維持、免疫応答の抑制的制御に枢要である。内在性制御性T細胞は、CD25分子を構成的に発現する。正常動物末梢CD4T細胞の約5-10%を占めるCD25T細胞を除去すると、甲状腺炎、糖尿病など様々な自己免疫病が自然発症してくる。このようなCD25CD4制御性T細胞の少なくとも一部は、正常胸腺で機能的に成熟した状態で産生される。制御性T細胞の末梢での維持にはIL-2が必須であり、CD25分子は単なる制御性T細胞のマーカーではなく、IL-2レセプターの構成分子として制御性T細胞機能に必須の分子である。一方、Foxp3は、制御性T細胞の発生、機能発現を制御するマスター制御遺伝子である。Foxp3は、胸腺、末梢のCD25CD4T細胞に特異的に発現しており、正常T細胞にFoxp3を発現させると、機能、表現型の点で内在性制御性T細胞と同等の制御性T細胞に転換できる。Foxp3CD25CD4制御性T細胞の量的・質的異常は、様々な自己免疫疾患/炎症性疾患の直接的原因となる。例えば、小児の免疫不全疾患であるIPEX(Immune dysregulation, polyendocrinopathy, enteropathy, X-linked)症候群では、高頻度にI型糖尿病、甲状腺炎、炎症性腸疾患のみならず、重篤なアレルギー(皮膚炎、食物アレルギー)を発症する。また、内在性制御性T細胞のみならず、Foxp3遺伝子の導入により作製した制御性T細胞を用いて、自己免疫病、アレルギーなど様々な免疫疾患の予防・治療が可能である。一方、内在性制御性T細胞の除去あるいは機能操作は、自家腫瘍に対して有効な免疫応答を惹起できる。逆に、制御性T細胞の制御能を強化すれば、移植臓器に対する拒絶反応を抑制し、長期の移植免疫寛容を誘導できる。即ち、制御性T細胞は免疫自己寛容のみならず、自己/非自己に対する免疫応答の抑制的制御に重要である。本講演では、病的、生理的免疫応答制御における制御性T細胞の役割について、Foxp3の遺伝子制御に関する最近の知見を交えて議論する。また、制御性T細胞を用いた免疫疾患の治療、予防の可能性について論じる。

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© 2007 日本臨床免疫学会
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