主催: 大阪大学保健センター、大学院医学系研究科身体防御健康医学
従来、アレルギー性炎症はTh2応答が原因で、Th1応答はIFN-γを産生して抗アレルギー作用を発揮すると考えられた。この様な定説に反して、私達はTh1細胞もまた気道過敏性(AHR)を誘導することを見いだした。Th1細胞は抗原刺激を受けるとIFN-γを産生する。ところが、抗原+IL-2+IL-18刺激を受けると、IFN-γとともに、気管支喘息の原因となるIL-13、更にIL-3、GM-CSF、RANTESなども産生する。ヒトTh1細胞の場合も同様である。この様なTh1とTh2サイトカインを同時に産生する特殊なTh1細胞をスーパーTh1細胞と呼ぶ。私達は、抗原特異的メモリーTh1細胞を有するマウスに、OVA+IL-18を経鼻投与するとスーパーTh1細胞が誘導され、気管支周囲の好酸球浸潤とAHRが誘導されることを報告してきた(Sugimoto et al., J Exp Med, 2004)。以下、私達は、Th1型気管支喘息モデルを作製し、病原体成分で誘導されたIL-18が原因で気管支喘息が誘導され、IL-18の阻害で抑制されることを見いだしたので報告する。
正常マウスをOVAとフロイント完全アジュバントで免疫し、能動型Th1マウスを作製した。OVA単独の経鼻投与だけでは気管支喘息を発症しないが、OVA+IL-18を投与すると、IFN-γとIL-13が産生され、前者が原因でAHR、後者が原因で肺繊維化が起こる。次に、病原体成分(LPS)を経鼻投与し、内因性IL-18依存性のTh1型気管支喘息が誘導されるか検討した。その結果、OVA+LPS投与でもAHRが誘導され、抗IL-18抗体でIL-18を中和すると、AHRが抑制された。この実験系は上気道感染で増悪するヒト気管支喘息の実験モデルと考えられることから、感染増悪型気管支喘息は、IL-18の阻害で抑制される可能性が示唆された。