日本臨床免疫学会総会抄録集
Online ISSN : 1880-3296
ISSN-L : 1880-3296
第35回日本臨床免疫学会総会抄録集
セッションID: S3-4
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シンポジウム3 分子・細胞をターゲットとしたImmunological intervention
IgE-FcεRI-マスト細胞 枢軸
*羅 智靖
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抄録

 アレルギー炎症のメインストリームであるIgE-FcεRI-マスト細胞枢軸を遮断する分子標的薬として,IgE-FcεRI高親和性結合を阻害するヒト化抗ヒトIgE抗体が製品化された。 この抗ヒトIgE抗体(omalizumab)は,花粉症やアレルギー性喘息の重症例で効果が高くその経済効果が期待されている。FcεRIを介して抗原・IgE複合体により活性化されたマスト細胞は,即時型アレルギー反応の実効細胞として働くだけでなく,自ら産生するサイトカインなどを介して慢性炎症を惹起する。一方でマスト細胞は鼻粘膜や気道粘膜でB細胞と相互作用し局所のIgE産生を増強すると,今度はIgEそのものがマスト細胞上のFcεRIの発現を増強し,抗原に対して過敏に過剰に反応するという「アレルギー増悪サイクル」が形成される。 またFcεRIはマスト細胞,好塩基球のみならず,ランゲルハンス細胞,単球/マクロファージ,活性化好酸球や好中球,血小板などの炎症細胞,さらに気道平滑筋にまで発現しているいことが明らかになって来ており,IgE結合の遮断は,IgEによるこれらの細胞の活性化を抑制することになる。またomalizumabはIgE産生へと分化したIgE+B細胞にアポトーシスを誘導し,IgE産生を抑制する。IgEのFcεRIへの結合部位はCε3ドメインにあり,omalizumabはこの部位に対するマウスモノクローナル抗体のCDRを遺伝子工学的にヒトIgGに移植した(95%がヒトIgG)ものを改変しているので,ヒトに対する抗原性が残存している筈である。2007年になって米国FDAから,およそ39,500例の投与患者の中からその0.1%にアナフィラキシーが出現したことが報告され,警告が発せられ,さらに抗原性の低減が要求されている。IgE-FcεRI高親和性結合の阻害はアレルギー治療の有望な戦略であることは間違いなく,外に可溶化ヒトIgEレセプターや,ヒト化抗FcεRIα鎖抗体あるいは,小分子の結合阻害薬などがあり,また最後に若干紹介したい。

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© 2007 日本臨床免疫学会
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