日本臨床免疫学会総会抄録集
Online ISSN : 1880-3296
ISSN-L : 1880-3296
第35回日本臨床免疫学会総会抄録集
セッションID: S4-4
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シンポジウム4 特異抗原をターゲットとしたImmunotherapy
新規癌胎児性抗原Glypican-3;肝細胞癌の診断と免疫療法への応用
*西村 泰治
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抄録

ヒトの肝細胞癌組織と正常組織におけるcDNAマイクロアレイ解析により、肝細胞癌に高発現する遺伝子としてGlypican-3 (GPC3)を同定した。GPIアンカー膜蛋白質であるGPC3は、肝細胞癌患者の約40%の血清中に検出される新規癌胎児性抗原であり、αフェト蛋白、PIVKA-IIにつぐ肝細胞癌の第3の腫瘍マーカーとして有用であることを示した(BBRC 306: 16, 2003)。さらにGPC3の癌免疫療法への応用をめざして基礎研究を行い、以下のような成果を得た。マウスにGPC3ペプチドを負荷した骨髄細胞由来樹状細胞を投与した後に、マウスGPC3を発現させたマウス大腸癌細胞株を移植することにより、自己免疫現象などの有害事象を伴うことなく、著明な腫瘍の増殖抑制ならびにマウスの生存期間の延長を誘導できた(Clin. Cancer Res. 10: 8630, 2004)。また、我々はマウス胚性幹 (ES) 細胞から樹状細胞(ES-DC)を分化誘導する方法を開発しているが(Blood 101: 3501, 2003)、マウスGPC3を発現するES-DCを樹立しマウスに免疫したところ、GPC3発現マウス癌細胞株に対する in vivo 抗腫瘍効果の誘導が観察された(Cancer Res. 66: 2414, 2006)。さらに、HLA-A2トランスジェニックマウスや、癌患者の血液検体を利用して、HLA-A2あるいはA24によりヒト・キラーT細胞に提示されるGPC3ペプチドを2種類同定した。これらのペプチドで癌患者のリンパ球を刺激することにより、GPC3発現ヒト肝細胞癌細胞株を傷害するヒト・キラーT細胞を誘導できた (Clin. Cancer Res. 12: 2689, 2006)。これらのHLA拘束性GPC3ペプチドを用いた肝細胞癌の免疫療法に関する臨床試験を、国立がんセンター東病院で医師主導型探索医療として開始した。

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© 2007 日本臨床免疫学会
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