日本臨床免疫学会総会抄録集
Online ISSN : 1880-3296
ISSN-L : 1880-3296
第35回日本臨床免疫学会総会抄録集
セッションID: W1-7
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ワークショップ1 臨床免疫学の将来を示唆するミッドウィンターセミナー
ヒト腸管粘膜内NK細胞の局所における分化
*知念 寛小林 拓久松 理一日比 紀文
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抄録

近年の研究により、マウスの腸管には、lineage marker陰性、c-kit陽性(lin- c-kit+)の免疫担当細胞の前駆細胞が存在することが知られている。しかしヒトの腸管にこのような細胞が存在するかについては明らかにされてはいない。 今回我々はヒト成人の腸管粘膜内にもlin- c-kit+細胞が存在していることを明らかにした。これらの細胞の表面抗原の発現はT/NK共通前駆細胞と酷似していた。また、RT-PCRによる解析では、NK細胞の分化において重要なId2、PU.1、SpiB1などの転写因子が胸腺細胞と比較して高発現していた。 このlin- c-kit+細胞をin vitro で培養したところ、その多くはCD3- CD56+ c-kitdim の未熟NK細胞と考えられる細胞へと分化した。我々は、このlin- c-kit+細胞より培養分化させたNK細胞を、ヒト成人の末梢血中、腸管粘膜固有層中、腸管上皮間中のNK細胞と比較した。培養分化させたNK細胞は末梢血中のそれとは表面抗原の発現やサイトカイン産生能、細胞傷害活性の程度などで異なっていたが、腸管内のそれとはほぼ一致していた。 このlin- c-kit+細胞をRAG-2KOマウスに移入すると、マウス腸管粘膜に生着したがNK細胞へは分化しなかった。この細胞を移入したマウス腸管より分離したヒトlin- c-kit+細胞をヒトサイトカイン存在下で培養するとNK細胞へと分化した。 我々は更に腸管内NK細胞と炎症性腸疾患との関連について検討し、クローン病では腸管内のNK細胞が増加していること、そして腸管でのNK細胞の分化が亢進していることを明らかにした。 以上のことから、ヒト成人の腸管粘膜は独立したNK細胞の分化の場であり、腸管内のNK細胞は粘膜免疫の恒常性維持に関与していると考えられた。

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© 2007 日本臨床免疫学会
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