主催: 大阪大学保健センター、大学院医学系研究科身体防御健康医学
目的 プロテオミクスを用いて、全身性血管炎患者における抗内皮細胞抗体(AECA)の対応抗原の同定を行う。 方法 ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)およびHeLa細胞からの抽出蛋白を2次元電気泳動で分離し、血管炎患者血清でWestern blot(WB)を行い、HUVECのみに染まったスポットを内皮細胞特異的自己抗原の候補蛋白として検出・同定し、臨床的意義について検討を行った。 結果 約150個のAECAの対応抗原候補蛋白を検出し、そのうちの同定し得た蛋白は63個であった。その1つは、抗酸化酵素であるPeroxiredoxin2(Prx2)であり、抗Prx2抗体陽性率は血管炎患者で61%(高安動脈炎で88%)、健常人で4%であり、とりわけ大型血管炎で陽性率は有意に高値であった。間接蛍光抗体法にてPrx2がHUVECの細胞膜表面に表出し、更にHUVECのみならず他の血管内皮細胞に発現していることをcell lysateを用いたWBにて証明した。また、抗Prx2抗体は血管内皮細胞からの炎症性サイトカインの分泌を亢進させた。臨床的には、抗Prx2抗体陽性患者血清では陰性患者血清に比べTATおよびDダイマーが有意に高値であり、抗Prx2抗体価は経時的評価にて疾患活動性との相関を認めた。 考察 今回、我々が初めて同定したPrx2に対する自己抗体は血管炎に特異性が高いマーカーと考えられ、血管炎の病態形成に関与している可能性が示唆された。