主催: 大阪大学保健センター、大学院医学系研究科身体防御健康医学
自己免疫疾患の治療において、全身的な免疫抑制を伴わない抗原特異的な免疫抑制が求められている。一方で、多くの自己免疫疾患について、その標的となる抗原は、未だ不明であったり、あるいは複数の抗原が標的となったりしていることが知られており、抗原特異的免疫抑制による治療法の開発を困難にしている。我々は、これまでにマウスのES細胞から樹状細胞(ES-DC)を分化誘導する手法を開発してきた。この手法を用いて、マウスES細胞に自己抗原遺伝子であるMyelin oligodendrocyte glycoprotein (MOG) p35-55ペプチドとT細胞抑制性分子のTRAIL遺伝子を導入し、in vitroでDCへ分化させた細胞(ES-DC-TRAIL/MOG)をマウス個体へ投与することにより、MOGペプチドで誘導された実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の発症を予防することができた。さらに、ES-DC-TRAIL/MOGを投与された個体は、EAEを誘導できる別の抗原であるMyelin Basic Protein (MBP)ペプチドあるいは蛋白で誘導されたEAEの発症さえも予防できた。そして、この予防効果には、CD4+CD25+制御性T細胞の関与が認められた。以上の結果は、抗原特異的な制御性T細胞の誘導による組織抗原特異的な免疫抑制療法という新たな可能性を示唆していると考えられる。