主催: 大阪大学保健センター、大学院医学系研究科身体防御健康医学
【目的】SHPS-1は単球系細胞に発現が認められる膜蛋白であるが、我々は最近、SHPS-1がマウスにおける実験的脳脊髄炎や接触性皮膚炎などの自己免疫性疾患の発症に必須であることを明らかにしている。そこで、今回我々は、関節リウマチのマウスモデルであるコラーゲン誘導関節炎(CIA)発症におけるSHPS-1の関与について検討した。
【方法と結果】SHPS-1の機能に重要である細胞内領域を特異的に欠失した変異SHPS-1を発現するマウス(MTマウス)をすでに作成しているので、これを用いてニワトリ由来のタイプIIコラーゲンで誘導されるCIAの発症を検討した。野生型マウスでは指、手関節を中心に累積発症率52%の割合で発症し、発症スコアーは3.0であった。一方、MTマウスでは全く発症が認められず、組織学的な解析においてもMTマウスの関節組織はほぼ正常に保たれていた。さらに、コラーゲンによって関節炎を誘導されたマウスにおける免疫応答を検討したところ、MTマウスではコラーゲン特異的な抗体産生能やT細胞の増殖能が減弱しており、炎症性サイトカインの産生低下も認められた。
【考察】MTマウスではCIAの発症が認められなかったことより、SHPS-1は抗原特異的免疫応答において重要なシグナル分子であり、リウマチ性疾患の治療を考える上で有力な標的となり得る事が示唆された。