Ewing肉腫は主に青少年期に発症する高悪性の骨軟部腫瘍である。肺転移例,体幹発生例など広範切除不能例では特に予後が悪く、近年、腫瘍抗原を標的とした免疫療法が注目されている。HLA class Iは細胞膜上で腫瘍抗原由来のペプチドを提示し,CD8+T細胞(キラーT細胞)により認識され,抗腫瘍性免疫応答に重要な役割をもつ.今回, ESFT 28症例を対象とし,生検組織における抗HLA class Iモノクローナル抗体(EMR8-5)を用いたHLA class I発現,またCD4,CD8リンパ球浸潤を調べ,累積生存率ほか臨床病理学的因子との関連を検討した.HLA class Iは18例(64%)で発現しており,無発現群(10例)は有発現群と比し有意に予後不良となる結果が示された(P=0.037).またCD8+Tリンパ球浸潤はHLA class I の発現強度と強く相関し(P=0.014),両者の存在は腫瘍の大きさ、新たな転移巣出現の有無、全生存率と関連していた.以上の結果から,ESFTにおいてHLA class IはCD8+Tリンパ球を介する免疫応答において重要な役割をもつと考えられ,HLA class I発現とCD8+Tリンパ球浸潤の共存がESFTの予後に影響を及ぼすことを本検討で初めて示した.