[目的]がん患者に対する抗原特異的細胞傷害性T細胞(CTL)移入療法の臨床応用を目指し、ペプチド特異的なCTLを効率良く大量に誘導する培養方法を確立すること、及びその治療効果を免疫不全マウスを用いて実証することを目的とした。
[方法]Glypican-3(GPC3)ペプチドワクチン投与前後の進行肝細胞癌患者末梢血単核球(PBMC)を使用した。新規CTL培養法としてPBMCにゾレドロン酸とGPC3ペプチドを共感作し、GPC3ペプチド特異的CTLを大量に誘導した。培養後の総細胞数、GPC3ペプチド特異的CTLの割合、γδT細胞の割合等をフローサイトメーターにて評価した。また、GPC3強制発現肝癌細胞株を使用し、細胞傷害性試験、及びNOD/Scidマウスに移植したモデルでの腫瘍増殖抑制効果を評価した。
[結果]少量のPBMC(2×106個)からGPC3ペプチド特異的CTLが大量誘導可能である(1.8×105個~6.1×107個, 増加率:490倍~170,000倍)ことが確認され、そのCTLはGPC3特異的な細胞傷害活性等の機能を有していた。in vivo 試験において、NOD/Scidマウスの系で抗腫瘍効果を評価した結果、GPC3特異的CTLとγδT細胞、それぞれに起因する抗腫瘍効果が確認された。
[結論]新規CTL誘導法によりGPC3ペプチド特異的CTLを大量に誘導することが可能であった。