抄録
代表的な自己免疫疾患である関節リウマチの治療では、サイトカイン等を標的とする生物学的製剤が導入され、画期的な効果を齎した。しかし、生物学的製剤でも臨床的寛解導入率は3割にすぎず、より高い寛解率を目指す必要がある。また、生物学的製剤は点滴か注射での使用に限定され、安全性や価格の問題も残る。そこで、比較的廉価で、かつ、生物学的製剤と同様の有効性を有する低分子量化合物の開発が注目されてきた。特に、炎症性免疫疾患では、多様なシグナル伝達経路の活性化が病態形成に関与し、それらは同時に治療標的としてのポテンシャルを有する。また、生物学的製剤は細胞間の相互作用を制御するが、低分子量化合物ならば特定の立体構造を構成できるようなデザインが可能で、その結果、細胞内のシグナル伝達分子に、鍵と鍵穴の関係のようにピタッと嵌って阻害することも可能となる。現在、関節リウマチを対象として免疫担当細胞のシグナル伝達に重要な役割を担うチロシンキナーゼを標的とした経口Jak阻害薬であるtofacitinib、経口Syk阻害薬fostamatinibの臨床試験が進行しているが、p38を標的とした治験では芳しい結果が示されなかった。今後、数多の低分子量経口シグナル阻害薬の開発が進展し、難治性の自己免疫疾患の新たな治療革命を齎すものと期待される。本講演では、現在注目されている低分子量化合物の新展開についてエビデンスを基に有効性と安全性の双方から概説する。