【背景】生体の重要な機構を担う蛋白質は半減期の短いものが多い。細胞内蛋白質はダイナミックで繊細な生成と分解の調節を受けており、個別の蛋白質の半減期を適正な長さに調節する事は生体維持に必須の機構である。
ユビキチン–プロテアソーム分解系は非リソソーム系タンパク質分解系の最も主要な機構である。
中條-西村症候群は原因不明の全身性炎症性疾患である。常染色体劣性遺伝形式を示す。
【目的】本症候群の原因遺伝子変異の同定を目的とした。
【方法】遺伝子解析の同意が得られた8名の患者及びその家族の遺伝子を用いて、SNPマイクロアレイと直接塩基配列解読を行なった。不死化培養細胞のプロテアソーム機能解析は、グリセオール濃度勾配による超遠心分画と蛍光基質を用いた蛋白加水分解機能測定を行なった。ユビキチン化蛋白質の検出は特異抗体を用いたWestern Blottingと免疫組織学的検出を行なった。
【結果】プロテアソームのサブユニットをコードする遺伝子領域にアミノ酸置換を伴う遺伝子変異を同定した。培養細胞においてプロテアソーム複合体の会合異常と遺伝子量効果を伴うプロテアソーム機能低下を認めた。患者由来培養細胞ではユビキチン化蛋白質の蓄積を認めた。
【結論】中條-西村症候群はプロテアソーム機能不全症であった。ヒト炎症性疾患におけるプロテアソーム研究の発展に貢献することが期待される。