臨床神経生理学
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投稿総説
時定数 (Time constant: TC) 2秒でもslow shiftsが記録できる状況の臨床汎用的な考察
交流増幅器を用いた低周波成分の記録に関する誤解と留意点
梶川 駿介松橋 眞生池田 昭夫
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2024 年 52 巻 2 号 p. 112-118

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抄録

広域周波数帯域脳波 (Wide-band EEG) の普及により, 従来よりも低い周波数成分が記録可能となった。とりわけ難治部分てんかんにおいて発作焦点に出現する発作時direct current (DC) 電位, および頭部外傷, 急性期脳卒中患者の予後不良因子として知られる皮質拡散脱分極 (Cortical spreading depolarization: CSD) は, 今後の臨床応用が期待される。ただし, 現在用いられている脳波計は交流増幅器であるため, 本来の原波形では見られないフィルタの影響を考慮する必要がある。また, 計算処理により交流増幅器で記録された波形から低周波成分をある程度再現することも可能であり, これにより低周波フィルタによる効果を推察することが可能である。以上を参考に今後低周波成分の臨床応用を進めていくことが肝要である。すなわち, 時定数はあくまでも定常電位の交流増幅器での減衰率を示したものであり, 時定数2秒でも脳内電位の変動が長くダイナミックな場合, たとえば0.01 Hz程度の波形が, 振幅が減衰されるものの観察される可能性があり, この周波数は従来観察されてきたCSDの周波数に相当する。

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