臨床神経生理学
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原著
  • 武田 さより, 宮本 礼子
    2024 年 52 巻 2 号 p. 85-94
    発行日: 2024/04/01
    公開日: 2024/04/11
    ジャーナル フリー

    【目的】高齢者における, 非利き手での短時間の箸操作学習に関連する, 安静時脳内ネットワークの解明を目的とした。【方法】右利きの健常高齢群と若年群, 各20名を対象とした。左手で9分間箸操作を練習し, 箸操作技能と, 安静時fMRIで取得した脳の安静時機能的結合 (RSFC) における, 練習前後変化と, 両者の相関関係を検討した。【結果】箸操作技能は両群とも練習後に有意に向上した。RSFCは, 高齢群では右一次運動野 (M1)–左角回のRSFCが練習後に有意に増加し, その変化は箸操作技能の向上と相関していた。若年群では右M1–左縁上回, 右M1–左小脳第II脚のRSFCが練習後に増加し, 右M1–左小脳第II脚の変化は箸操作技能の向上と相関していた。【結論】高齢群において非利き手での箸操作学習初期段階には, 右M1–左角回という, 若年群とは異なる安静時ネットワークが関連していたことが示唆された。

  • アンケート調査およびカリキュラム確定に至る過程
    神 一敬, 植松 明和, 内山 真, 川合 謙介, 川端 茂徳, 小林 勝弘, 酒田 あゆみ, 高橋 修, 内藤 寛, 花島 律子, 藤原 ...
    2024 年 52 巻 2 号 p. 95-111
    発行日: 2024/04/01
    公開日: 2024/04/11
    ジャーナル フリー

    日本臨床神経生理学会は, 脳波部門, 筋電図・神経伝導部門の2分野の専門医・専門技術師制度を運用している。専門制度委員会が「臨床神経生理専門医・専門技術師研修カリキュラム (案) 」としてまとめた, 身につけるべき知識・技能の到達目標としてのグレードの妥当性を検証するためのアンケート調査を行った。委員会設定グレードが妥当であるという回答が80%未満に留まったものを, 委員会設定との間に解離ありと定義した。基礎部門では医師設定のみで解離がみられたが, 脳波部門及び筋電図・神経伝導部門では医師設定より技術師設定で解離が目立っていた。委員会設定グレードが妥当であるという回答が50%未満であった技術師設定の4項目 (脳波検査の適応, 脳波の覚醒度・加齢による変化, 神経伝導検査の適応, RNS検査の適応) は, 審議の結果, 委員会設定B (内容の概要を知っている) からA (内容を熟知している) に変更され, 研修カリキュラムが確定された。

投稿総説
  • 交流増幅器を用いた低周波成分の記録に関する誤解と留意点
    梶川 駿介, 松橋 眞生, 池田 昭夫
    2024 年 52 巻 2 号 p. 112-118
    発行日: 2024/04/01
    公開日: 2024/04/11
    ジャーナル フリー

    広域周波数帯域脳波 (Wide-band EEG) の普及により, 従来よりも低い周波数成分が記録可能となった。とりわけ難治部分てんかんにおいて発作焦点に出現する発作時direct current (DC) 電位, および頭部外傷, 急性期脳卒中患者の予後不良因子として知られる皮質拡散脱分極 (Cortical spreading depolarization: CSD) は, 今後の臨床応用が期待される。ただし, 現在用いられている脳波計は交流増幅器であるため, 本来の原波形では見られないフィルタの影響を考慮する必要がある。また, 計算処理により交流増幅器で記録された波形から低周波成分をある程度再現することも可能であり, これにより低周波フィルタによる効果を推察することが可能である。以上を参考に今後低周波成分の臨床応用を進めていくことが肝要である。すなわち, 時定数はあくまでも定常電位の交流増幅器での減衰率を示したものであり, 時定数2秒でも脳内電位の変動が長くダイナミックな場合, たとえば0.01 Hz程度の波形が, 振幅が減衰されるものの観察される可能性があり, この周波数は従来観察されてきたCSDの周波数に相当する。

特集「筋電図・神経伝導検査の基礎」
  • 国分 則人
    2024 年 52 巻 2 号 p. 119
    発行日: 2024/04/01
    公開日: 2024/04/11
    ジャーナル フリー
  • 臨床検査技師はここまで行うべき!
    山内 孝治
    2024 年 52 巻 2 号 p. 120-131
    発行日: 2024/04/01
    公開日: 2024/04/11
    ジャーナル フリー

    神経伝導検査 (NCS) をどこまで行うべきかの判断は, 検査時の様々な条件によっても異なるが, 基本的には, 1) 臨床にて疑われた疾患や障害の肯定 (合致) あるいは否定 (除外) が可能な情報, 2) 臨床症状に対する説明あるいは裏付けが可能な情報, 3) 検査における技術的な信頼性が保たれていることを確認できる情報が重要と考える。1) には, 局在性や限局性の確認があり, 手根管症候群 (CTS) での手掌刺激, 肘部尺骨神経障害 (UNE) での肘部inchingの他にも, 前骨間神経の運動神経伝導検査 (MCS), 外側前腕皮神経 (LAC), 内側前腕皮神経 (MAC), 尺骨神経背側皮枝 (DUC) の感覚神経伝導検査 (SCS) などが有用となる場合もある。2) では, 原則, 症状が認められる部位を検査することが重要となる。3) には, 刺激の波及があり, その確認方法として, 正中神経MCSでは短母指外転筋 (APB) と小指外転筋 (ADM) の同時導出, LAC SCSでは母指, MACやDUCのSCSでは小指との同時導出, 比較法である虫様筋–骨間筋 (2L-INT) 法では4チャンネル導出, 環指法では小指との同時導出などが有用となる。さらに, 刺激の波及が避けられない場合には, 衝突法も有用となる。

  • 神林 隆道
    2024 年 52 巻 2 号 p. 132-141
    発行日: 2024/04/01
    公開日: 2024/04/11
    ジャーナル フリー

    神経伝導検査 (NCS) は, 特に末梢神経疾患の診療において様々な情報をもたらす有用なツールである。NCSの役割は多岐にわたるが, その中でも障害が軸索性か脱髄性かという障害の質的診断は, 正確な診断や予後評価に欠かせない重要な情報となる。しかしながら, 障害が脱髄性かどうかの解釈や, 脱髄性ニューロパチーの診断において極めて重要な所見である伝導ブロックの診断には多くのpitfallが存在する。NCSを行う際や, その結果の解釈にあたっては, これらのpitfallを十分に理解した上で, 病歴や臨床で認める筋力低下や感覚障害にみあう異常があるかどうかを常に考えることが, 脱髄や伝導ブロックの診断に重要であり, 電気生理検査はハンマーの延長と言われる所以でもある。

  • 山﨑 博輝, 高松 直子, 和泉 唯信
    2024 年 52 巻 2 号 p. 142-148
    発行日: 2024/04/01
    公開日: 2024/04/11
    ジャーナル フリー
  • 児玉 三彦
    2024 年 52 巻 2 号 p. 149-157
    発行日: 2024/04/01
    公開日: 2024/04/11
    ジャーナル フリー

    針筋電図は神経筋診断を行う上で欠かせない重要な臨床検査である。本稿は初学者を対象とした基礎知識についての解説である。まず, 針電極の構造と活動電位記録の原理について述べた。針電極で観察できる範囲は非常に狭く, また, 振幅や持続時間といったパラメータによって異なる。実際の検査にあたっての筋電計の設定, 感度 (ゲイン) や掃引速度について触れた。実際の検査と同様, 安静時に続いて随意収縮時の評価という流れに従い観察される主な活動電位の特徴について記載した。安静時の所見として, 刺入時活動, 終板活動について要点をまとめ, さらに脱神経電位として重要な線維自発電位, 陽性鋭波, および線維束電位について詳述した。随意運動時の運動単位電位の観察にあたっては, 多相波の発生機序や神経原性および筋原性変化の波形の違いについての理解は必須である。動員と干渉パターンの観察は客観性が高くそれらのポイントについて概説した。

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