臨床神経生理学
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投稿総説
  • 飛松 省三
    2024 年 52 巻 3 号 p. 161-170
    発行日: 2024/06/01
    公開日: 2024/06/14
    ジャーナル フリー

    今日では, デジタル脳波計が脳波計測の主流になった。筆者は, 福岡市内の総合病院で非常勤医師として脳波判読と誘発電位を担当している。地域のハブ病院のため, 他院からの脳波を判読する機会が増えてきた。本学会ではデジタル脳波の取り扱いや脳波導出モンタージュの解説書を出版しているが, それに則って脳波を記録している施設は驚くほど少ないことに気づいた。脳波判読は技師と判読医の双方向通信が基本であり, それは患者ファーストにつながる。つまり, 技師が判読できる脳波を記録し, 脳波専門医が脳波を正確に判読することが, 患者の診断・治療に貢献する。そこで, 3回にわたって, デジタル脳波の記録と判読の要点について解説する。

  • 飛松 省三
    2024 年 52 巻 3 号 p. 171-180
    発行日: 2024/06/01
    公開日: 2024/06/14
    ジャーナル フリー

    「デジタル脳波の記録と判読」の2回目として, “読めない脳波”を取り上げる。筆者の定義する“読めない脳波”とは, まず記録開始の1頁目をチェックして, 1) 電極接触抵抗を表示させると計測していない, 2) 交流フィルタをデフォルトでオンにしている, 3) 基準電極導出で19 ch表示していない, 4) 電極ポップが混入しているなどの, 脳波記録を指す。本稿では, これらの点に関して解説し, 何故読めないのかを具体的に説明する。

特集「作業療法と臨床神経生理学」
  • 石井 良平, 桐本 光
    2024 年 52 巻 3 号 p. 181-182
    発行日: 2024/06/01
    公開日: 2024/06/14
    ジャーナル フリー
  • 東 登志夫
    2024 年 52 巻 3 号 p. 183-188
    発行日: 2024/06/01
    公開日: 2024/06/14
    ジャーナル フリー

    運動イメージトレーニング (Motor Imagery Trainning: MIトレーニング) は, 無作為化試験を用いた臨床研究も数多く行われ, エビデンスの蓄積も進んできている。しかしながら, 現状のリハビリテーションの現場では, MIトレーニングが広く活用されているとは言いがたい状況にある。その理由の一つとして, MIトレーニングにおける介入方法の標準化が不十分であることが挙げられる。したがって, 臨床におけるMIトレーニングの発展のためには, その方法論の標準化に向けた臨床神経生理学的なトランスレーショナルリサーチが重要である考えている。本稿では, MIトレーニングの方法論を検討するために所属研究室内で取り組んだ研究をいくつか紹介し, MIトレーニングの課題について議論した。

  • 竹林 崇
    2024 年 52 巻 3 号 p. 189-193
    発行日: 2024/06/01
    公開日: 2024/06/14
    ジャーナル フリー

    脳卒中後の上肢運動障害は多くの対象者に生じる後遺症の一つである。上肢運動障害は, 対象者のQuality of lifeに大きな影響を与えると言われており, リハビリテーションにおいては常により良いアプローチ方法の開発・検証が求められてきた。大規模なランダム化比較試験等を通して, 脳卒中後の上肢運動障害の改善に関して, 効果が検証されたエビデンスが蓄積されてきた。そういった背景の元, 脳卒中後の上肢運動障害をより効率的に改善するために, 対象者の希望やプログラムの特徴を鑑み, 併用するエビデンスを基盤とした実践が臨床において推奨されている。本稿では, エビデンスを基盤とした実践において主に用いられるエビデンスが確立された, いくつかのリハビリテーションプログラムについて解説していく。

  • 桐本 光, 堀之内 峻之, 祢津 智久
    2024 年 52 巻 3 号 p. 194-198
    発行日: 2024/06/01
    公開日: 2024/06/14
    ジャーナル フリー

    経耳介迷走神経刺激 (transcutaneous auricular vagus nerve stimulation: taVNS) がコリン作動性神経回路に及ぼす影響を検討することを目的とした。健常成人被験者22名を対象とし, 左耳甲介舟に間歇的 (30秒on/30秒off×30分間) または持続的 (15分間) taVNS, 耳朶への疑似刺激 (15分間または30分間) をランダムな順序で行った。刺激強度は感覚閾値と痛覚閾値の中間とした。コリン作動性神経回路機能の間接的な指標として短潜時求心性抑制 (SAI) を用いた。単発経頭蓋磁気刺激及びこれに20 ms前後先行した正中神経刺激が行われた時に短母指外転筋から記録された運動誘発電位の振幅比を, taVNS前, 終了後, 終了15分後に評価した。持続的taVNS条件では他の刺激条件と比較して, 刺激終了15分後にSAIが有意に上昇した。taVNSはSAIを促通することから, コリン作動性神経回路が機能低下した認知症, パーキンソン病患者の在宅リハビリテーションに活用できる可能性が示された。

  • 鈴木 誠
    2024 年 52 巻 3 号 p. 199-205
    発行日: 2024/06/01
    公開日: 2024/06/14
    ジャーナル フリー

    近年, 作業療法における動作練習に低強度経頭蓋電気刺激を付加した介入の有効性が示されるようになってきている。低強度経頭蓋電気刺激の中でも, 頭皮上から交流電気を流す方法は, 経頭蓋交流電気刺激と呼ばれている。経頭蓋交流電気刺激は, 陽極と陰極の入れ替わりの周期に神経の固有振動の周期が引き込まれる現象を利用して, 神経の振動周期を変化させる手法である。はたして, 経頭蓋交流電気刺激による振動周期の調節は, 作業療法における動作練習の効果を促進するための有効な手段になりえるのだろうか? また, 作業療法における動作練習に経頭蓋交流電気刺激を付加した場合, その効果をどのように検証したら良いのだろうか? 本稿では, 経頭蓋交流電気刺激に伴う脳活動の変化や効果検証精度の観点からこれら二つの疑問について考え, 作業療法における経頭蓋交流電気刺激の応用可能性を探索した。

  • 中薗 寿人
    2024 年 52 巻 3 号 p. 206-211
    発行日: 2024/06/01
    公開日: 2024/06/14
    ジャーナル フリー

    経頭蓋磁気刺激 (TMS) を複雑なパターンで反復刺激するpatterned rTMSは, 非侵襲的にヒトの大脳皮質に神経可塑性を誘導できる。この非侵襲的脳刺激法はニューロモデュレーションの手法として臨床応用が期待され, 特に作業療法と併用することで脳卒中患者の麻痺側上肢機能が改善した。しかし, そのrTMSの効果は一過性で, 個体間での効果のバラツキが問題となる。この個体間変動の一因として, 大脳皮質の神経振動が関連する可能性がある。本稿では神経振動に対して同調効果のある経頭蓋交流電気刺激 (tACS) を用いた新たな刺激手法を紹介し, そのメカニズムを考察する。具体的には, 神経振動をtACSで修飾し, 最適な時間窓でpatterned rTMSを組合せることで刺激の効果が持続かつ安定化する。今後, この新たなニューロモデュレーションの手法が確立し, 作業療法の場面に応用されることを期待する。

特集「救急現場での神経生理検査」
  • 木崎 直人, 久保田 有一
    2024 年 52 巻 3 号 p. 212
    発行日: 2024/06/01
    公開日: 2024/06/14
    ジャーナル フリー
  • 久保田 有一
    2024 年 52 巻 3 号 p. 213-215
    発行日: 2024/06/01
    公開日: 2024/06/14
    ジャーナル フリー

    Neurocritical Care EEG, which is getting popular in Europe and the United States, has recently begun to spread widely also in Japan. The neurocritical care EEG is generally called Critical Care EEG (CCE), but in Japan, it is difficult to give it an appropriate name in translation, and it is sometimes called by various names, such as emergency EEG, neuro-emergency EEG, and ICU EEG. In the guidelines to be published by the Japanese Society of Clinical Neurophysiology in the future, it is planned to unify these names into Critical Care EEG. In this paper, we present a recent update on Critical Care EEG.

  • 向野 隆彦, 松本 航, 山口 高弘, 渡邉 恵利子, 酒田 あゆみ, 重藤 寛史
    2024 年 52 巻 3 号 p. 216-223
    発行日: 2024/06/01
    公開日: 2024/06/14
    ジャーナル フリー

    近年, 集中治療室での持続脳波モニタリングの普及により, 意識障害患者において非痙攣性てんかん重積状態の診断が重要視されている。アメリカ臨床神経生理学会 (ACNS) は, 2021年に最新の神経救急脳波用語 (ACNS2021) を発表し, 非痙攣性てんかん重積状態の診断基準を具体化した。この定義により, 脳波上の発作や脳波臨床発作などが明確に分類されるようになった。当院での経験でも, ACNS2021の定義は診断の具体性と明確さが確認でき, 早期診断と適切な治療に繋がると考えている。一方で, 評価者間の一致率や実臨床での適用における課題も指摘されており, 今後の研究と検証が必要である。救急現場ではACNS2021の用語が標準となりつつあり, 新しい定義を習熟していくことが重要である。

  • 八木 和広, 野地 七恵, 富井 裕歌里, 茭口 朋恵, 赤澤 香菜
    2024 年 52 巻 3 号 p. 224-229
    発行日: 2024/06/01
    公開日: 2024/06/14
    ジャーナル フリー

    ICUでの持続脳波モニタリング (cEEG) は, 非けいれん性てんかん重積状態, てんかん, 意識障害, 脳炎や脳症, Critical Care領域における脳波モニタリングなどに用いられる。ICUで行う場合でも, 通常の脳波検査と同様に10-20法に基づき頭皮に電極を装着する。ただし, 電極装着時は, 挿管チューブや点滴ライン, 頭蓋内圧 (ICP) のケーブルやドレーンチューブに注意を払わなければならない。また, 心電図, 血圧, SpO2およびICPなどのモニター値を常にチェックする必要がある。特に, 頭部を動かす際には注意を要する。1名の技師で装着から記録まで可能であるが, 念のために外回りの技師と2名で対応する方が安全で記録開始までスムーズにいく。cEEG 中には, 患者自身による体動, 体位変換, 喀痰吸引などの様々な処置やリハビリテーションにより電極が不安定になりやすいため, 念入りに固定を行う。また, これらは異常な脳波波形様を呈し, 脳波のみの記録ではそれがアーチファクトなのか, 異常波形なのか判断に迷う場合がある。そこで, 脳波とアーチファクトの鑑別にビデオ同時記録が有効である。また, ビデオ同時記録は, けいれん性や非けいれん性の鑑別, 微細な臨床症状 (ミオクローヌス, 口部自動症や一点凝視など) の確認にも重要な役割を持つ。当院では, ICUで通常の脳波検査を行い, 必要があった場合にそのままcEEGに移行することが多い。ICUでのcEEGは48時間が推奨されているが, 当院では脳波計が睡眠検査やてんかんビデオ脳波モニタリングと併用されているため定点的に記録をする方法で対応している。脳波計がルーチン検査用以外に必要ではあるが, Neuro-ICUがなくても, 24時間体制が構築できなくても, 杓子定規にできないのではなく, まずはできる範囲で脳波モニタリングを始めてはどうだろうか。臨床側としても, 治療戦略の指標になると考える。本稿では, 当院でのcEEGの運用を中心に述べる。

  • 福地 聡子
    2024 年 52 巻 3 号 p. 230-240
    発行日: 2024/06/01
    公開日: 2024/06/14
    ジャーナル フリー

    最近, ICUの臨床現場で脳波モニタリング「Critical Care EEG」の有用性が高まり普及しつつある。「Critical Care EEG」は, 急性期の重症脳神経疾患に対する脳波検査であり, 持続脳波モニタリング (cEEG) として24時間から数日間にわたり脳波を記録しつづける検査のことを示す。主な目的は非痙攣性てんかん重積状態 (NCSE) および非痙攣性てんかん発作 (NCSz) の診断および治療効果判定である。明らかな運動症状を伴わない発作を捕捉するためには脳波検査は必須である。NCSEは神経学的予後不良因子であるため, 迅速な脳波検査と早急な治療介入が必要となる。すなわち, 「Critical Care EEG」は緊急検査である。迅速な臨床検査技師による関与が患者の予後を左右するといっても過言ではない。さらに, 検査の質は臨床検査技師の関わり方次第で大きく変わる。本稿では, 当院のICUで行われている脳波モニタリング「Critical Care EEG」の実際と臨床検査技師の役割について述べる。

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