腕神経叢障害の診断は難しく, 苦手意識を持つ医師は少なくない。頸部から腋窩に至るまでに神経束が合流・分離しながら走行する腕神経叢は解剖学的に理解が難しく, 画像検査の有用性も限定的である。さらに腕神経叢障害は, 脊椎・脊髄疾患や末梢神経障害と比べると頻度が少ない一方で, 臨床症候が脊髄障害や神経根障害と類似しているため, 誤診されやすく, また見逃されやすい。そのような中で, 電気生理検査は腕神経叢障害の局在診断にきわめて有用である。神経伝導検査 (NCS) と針筋電図により脊椎・脊髄疾患や末梢神経障害との電気生理学的鑑別診断は比較的容易であり, また様々なNCSを組み合わせることで腕神経叢内の詳細な局在診断も可能である。ただし, 正確な診断のためには, 神経根から腕神経叢, 末梢神経に至る神経機能解剖と, 腕神経叢障害をきたす様々な原因や疾患, 検査のpitfallや異常の判定についての知識に加え, 衝突法を含む近位部刺激やuncommon NCSの技術も必要である。本稿では腕神経叢障害の電気診断に必要な知識と技術について解説する。