日本臨床プロテオーム研究会要旨集
第2回日本臨床プロテオーム研究会
セッションID: 8
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一般演題
病態プロテオミクスによる脳腫瘍化学療法感受性に関連するタンパク質群の解析
*荒木 令江森川 崇長 経子青木 雅史小林 大樹Patrakitkomjorn Siriporn久保 美和中村 英夫倉津 純一佐藤 陽美佐谷 秀行
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抄録
最も予後の悪い腫瘍として脳腫瘍があげられる。特に悪性のgliomaの中で、唯一化学療法に感受性を示す乏突起神経膠腫(anaplastic oligodendroglioma/astrosytoma:AOG)に注目し、AOGの抗癌剤感受性に関連して動態変化するAOG組織細胞蛋白質群を融合differential解析を行うことにより、これらの分子メカニズムの推測を試みた。AOG組織サンプルは病理学的検査、1p, 19q LOHの有無(抗癌剤感受性・非感受性)による分類を行い、2種類のproteomic differential display (2D-DIGE法, cICAT/iTRAQ法) をProQ Diamondを用いたリン酸化蛋白質解析と平行して行った。非感受性で特異的に上昇した蛋白は161、減少したものは44、又、リン酸化が変動する蛋白質は新規の分子群を含めて28個が同定された。同時にDNAチップ解析を行い得られたすべてのデータを統合し、分子シグナルネットワーク解析から薬剤感受性に関連して特徴的なものを抽出したところ、アポトーシス関連キャスケード、補体凝固系・血管新成因子系、細胞周期G1/S, G2/M関連分子群によるシグナルの亢進、インテグリン・カドヘリンを介した接着因子群、分解系の亢進、核レセプターなど転写因子系を介したシグナル亢進が認められた。これらのシグナルに関連する分子群の抗体ライブラリーを作成し、独自に開発したbrain natural protein chipによるvalidationを行った。現在、特に有用であった特異的抗体の混合カクテルを作成し、薬剤感受性に関わる特異的なプロファイルを示すパターンのデータベース化を行っている。得られた情報はAOGの化学療法選択、治療標的の検索、創薬の開発に有用である可能性がある。
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© 2006 日本臨床プロテオーム研究会
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