2001 年 5 巻 1 号 p. 39-48
日本においてコミュニティ心理学が,1975年にコミュニティ心理学シンポジウムとして旗揚げされてから26年になり,学会となって3回目を迎えた現在まで,さまざまな問題に取り組んできたが,特に,コミュニティ心理学はその母体が地域精神保健にあるため,取り組む課題として精神保健や臨床心理学的問題が多くあった。コミュニティ心理学は,個人を中心とした精神保健や臨床心理の取り組みに対して,環境の重要性,社会とのつながりの重要性を強調し,社会的文脈で人間を捉えることの必要性を主張してきた。
ここでは,臨床心理士の業務として,3本目の柱として挙げられている「臨床心理学的地域援助」について,その明確なる定義,そこに備えるべき理念,独自性,方法などについてコミュニティ心理学の立場から提言した。
臨床心理学的地域援助とは,地域社会で生活を営んでいる人々の,心の問題の発生予防,心の支援,社会的能力の向上,その人々が生活している心理的・社会的環境の整備,心に関する情報の提供を行う臨床心理学的行為を指している,と定義した。