2001 年 5 巻 1 号 p. 49-69
グラウンデッド・セオリー・アプローチは,データに密着(grounded)した分析から独自の理論を生成する質的研究法として1960年代に開発されたものであるが,近年日本においても,看護学や社会幅祉学などヒューマンサービス領域をはじめ社会科学領域においても関心をもたれている。その一方で,実際の分析技法に関しては分かりにくい,むずかしいという反応が多いのも特徴的である。1990年代初めに露見した,考案者であるストラウスとグレーザーの見解の相違も,そうした傾向に拍車をかけている。
そこで私は,彼らの立場を批判的に検討し,この研究法に本来的に備わっている特性を確認したうえで,私の解釈と提案を盛り込んだ分析技法を修正版GTAとして提示しているので,本稿ではその要点を説明する。大原則であるgrounded on dataの意味をこの研究法が考案された背景から明らかにし,ついで修正版の特徴である分析技法について具体的に述べ,合わせて実際の研究例を二つ紹介する。