2024 年 33 巻 p. 87-108
本稿は,全校での授業研究と日本の算数カリキュラムのカリキュラム研究(教材研究)を結合させた米国の三つの小学校の事例を簡潔に記述したものである。これらの学校では,児童の算数学力が大幅に向上し,米国において歴史的に教育が行き届いていなかった子どものグループに通常見られるような学力格差の解消が見られた。これらの現場は,日本のカリキュラム教材に下支えされた全校での授業研究の力を実証するものである。日本国外での授業研究の努力の効果と持続可能性は疑問視されてきた一方で,これら成功した三つの現場を際立たせるいくつかの要素が示唆されている。その要素とは,質の高い授業研究モデルが利用できること,日本のカリキュラム教材や専門的知見が利用できること,現地の教師のリーダシップ,(教師と子どもの両方を)ケアする共同的なコミュニティを強調する学校文化である。これらの現場を検討した上で,本稿では,日本の教育研究者が他国の教育改善へと影響を与えるために日本のカリキュラムの知識を活用しうる三つの方法を提案する。