映画研究
Online ISSN : 2423-9399
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玩具映画の受容における視覚性と触覚性
チャンバラ映画分析からのアプローチ
雑賀 広海
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ジャーナル オープンアクセス

2017 年 12 巻 p. 4-25

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抄録

本論文が着目するのは、玩具映画と呼ばれるメディアである。玩具映 画とは、戦前の日本でこどもの玩具として販売された簡単な映写機と短 い 35mm フィルムのことを指す。これを用いてこどもたちは家庭で映画を 上映していた。本論文は、玩具映画で遊ぶこどもの視覚性に、映画館 の観客のそれとは異なり、触覚性が介入してくることを明らかにした。 戦前期において家庭の映画鑑賞に使われたメディアは、玩具映画のほ かに小型映画もあった。しかし、こどもとの関係から見ると、小型映画 は教育目的で使われることが多く、したがって、こどもは受動的な姿勢 が要求された。玩具映画の場合、それが玩具であるということによって、 こどもは能動的なアクションをとる。つまり、こどもの視覚性のなかに、 玩具に触れるという触覚性が介入してくるのである。こどもと玩具映画 が結ぶこうした遊戯的な関係性は、現代のメディア環境を考察するうえで も重要な概念となるという結論に至った。

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© 2017 日本映画学会
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