映画研究
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  • 音響と配役を手掛りに
    羽鳥 隆英
    2019 年 14 巻 p. 4-27
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/09
    ジャーナル オープンアクセス
      本論は橋本忍の脚本を岡本喜八が監督した映画『日本のいちばん長い日』における昭和天皇表象の研究である。初めに 2019年現在の研究状況や岡本の作家的な経歴における天皇の問題を確認した上(第 I節)、劇中に張り巡らされた様々な水準のコミュニケーションに着目しつつ『日本のいちばん長い日』の長大な物語を整理した(第II 節)。次に映画大詰の玉音放送の場面を構成する映像=音響の相関性を精査し、先行の玉音放送表象などとも比較しつつ、『日本のいちば ん長い日』が試みる二重の異化と一重の相対化を指摘した(第III節)。さらに映画半ばの天皇による「大東亜戦争終結ノ詔書」の署名、玉音盤の吹込と特攻出撃の並行編集に焦点を絞り、第一に「サウンド・ブリッジ」を活用した音響設計(第IV節)、第二に天皇役の 8代目・ 松本幸四郎と特攻基地の指揮官・野中大佐役の伊藤雄之助の関係に着目しつつ(第V節)、天皇表象に暗示的に仕掛られた価値転覆性を指摘した。
  • 福島 可奈子
    2019 年 14 巻 p. 28-49
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/09
    ジャーナル オープンアクセス
        第一次から第二次世界大戦までの戦間期にフランスで発売された、パテ・シネマ社製小型映画の産業技術的特徴とその経営戦略について論じる。パテ・シネマ社は、第一次世界大戦直前まで生フィルム製造販売事業で世界的覇者だったが、大戦後の大不況によってアメリカのコダック社に覇権を奪われた。その結果在庫フィルムを無駄なく再利用することで新規開拓を目指し、パテ・ベビー(9ミリ半映画)やパテ・ルーラル(17ミリ半映画)といった独自の小型映画を生み出す。だが日本の先行研究では、パテ・ベビーを中心に日本国内での小型映画文化研究が主流で、フランスでの小型映画の開発事情を含めた産業技術面から十分に議論されてきたとは言い難 い。ゆえに本稿では、二つの大戦に翻弄された二人の経営者(シャルル・パテとベルナール・ナタン)の経営手腕から、パテ・シネマ社が小型映画発売に至る経営的かつ産業技術的必然性を具体的に明らかにした。それによってパテ・ベビーを含む小型映画事業そのものが、第一次世界大戦後の大不況と軍事技術の転用なしには誕生し得なかったことを指摘した。
  • 『壁の中の秘事』・『現代好色伝 テロルの季節』における「密室」
    今井 瞳良
    2019 年 14 巻 p. 50-70
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/09
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は、団地を舞台とした『壁の中の秘事』(1965年)と『現代好色伝 テロルの季節』(1969年)の分析を通して、若松孝二の「密室」の機能を明らかにすることを目的とする。若松の「密室」は、松田政男が中心となって提唱された「風景論」において、「風景(=権力)」への抵抗として重要な地位を与えられてきた。「風景論」における「密室」は、外側の「風景」に相対する「個人=性」のアレゴリーであり、「密室」と「風景」は切り離されている。しかし、若松の団地はメディアによって外側と接続されており、「風景論」の「密室」とは異なる空間であった。『壁の中の秘事』では、「密室」を出た浪人生・ 誠による殺人がメディアを介して「密室」に回帰することで、メディアの回路を提示し、『現代好色伝』は「密室」を出た後のテロを不可視化することで、メディアの回路が切断されている。若松の団地は、 脱「密室」の空間であり、メディアが日常生活に侵入している環境自体を問い直す「政治性」を持っていたのである。
  • Geopolitical and Sexual Tension in Lee Chang-dong’s Burning
    藤城 孝輔
    2019 年 14 巻 p. 72-98
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/09
    ジャーナル フリー
        This paper identifies the sociopolitical aspects of adaptation evident in Burning (Lee Chang-dong, 2018), a South Korean-Japanese co-production based on Murakami Haruki’s 1983 short story “Barn Burning.” In the original story, Murakami employs his quintessential motif of the disappearance of a female character for depicting the male protagonist’s sense of loss amid the increasingly materialistic economic bubble of Japan in the 1980s. While exhibiting the same motif of a vanishing heroine, Lee’s film hints at the sociopolitical conditions of contemporary Korea by introducing various changes, such as the relocation of the setting to Paju, an agricultural city adjacent to the DMZ border, and by foregrounding both the heroine’s sexuality and the competitive tension between the two male characters. By employing plot devices such as an inexplicably disrupted phone call and the sound of a propaganda broadcast, the film characterizes both the missing heroine and North Korea as invisible, the former being a potential victim of serial killing and the latter an unseen enemy state believed to be a constant threat. By identifying and analyzing the film’s motif of visibility and invisibility, this paper demonstrates how the tension between the protagonist and the antagonist resonates with the longstanding geopolitical tension between the two Korean states.
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