映画研究
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戦間期におけるパテ・シネマ社の小型映画産業とその興亡
福島 可奈子
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ジャーナル オープンアクセス

2019 年 14 巻 p. 28-49

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抄録

    第一次から第二次世界大戦までの戦間期にフランスで発売された、パテ・シネマ社製小型映画の産業技術的特徴とその経営戦略について論じる。パテ・シネマ社は、第一次世界大戦直前まで生フィルム製造販売事業で世界的覇者だったが、大戦後の大不況によってアメリカのコダック社に覇権を奪われた。その結果在庫フィルムを無駄なく再利用することで新規開拓を目指し、パテ・ベビー(9ミリ半映画)やパテ・ルーラル(17ミリ半映画)といった独自の小型映画を生み出す。だが日本の先行研究では、パテ・ベビーを中心に日本国内での小型映画文化研究が主流で、フランスでの小型映画の開発事情を含めた産業技術面から十分に議論されてきたとは言い難 い。ゆえに本稿では、二つの大戦に翻弄された二人の経営者(シャルル・パテとベルナール・ナタン)の経営手腕から、パテ・シネマ社が小型映画発売に至る経営的かつ産業技術的必然性を具体的に明らかにした。それによってパテ・ベビーを含む小型映画事業そのものが、第一次世界大戦後の大不況と軍事技術の転用なしには誕生し得なかったことを指摘した。

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© 2019 日本映画学会
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