映画研究
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女を見る女のまなざし
映画『華岡青洲の妻』における女同士の絆
徐 玉
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2020 年 15 巻 p. 4-26

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抄録

本稿は、増村保造の映画『華岡青洲の妻』(1967年)における女同士の欲望や絆の描き方に注目し、有吉佐和子による原作小説と比較しながら、その映画的表現の特色を考察する試みである。まず、この映画において、加恵と於継の心理や欲望が、二人のまなざしのやりとりと連動していることを検証した。続いて、欲望の三角形の概念を援用しながら、青洲、加恵、於継の三者関係を考察し、加恵の青洲への愛や献身は、於継のそれの模倣であると論じた。また、加恵と於継の愛憎を見守る女性「観客」としての小陸の視線を加え、女たちの間には、権力が奪われているがゆえに結ばれる連帯が存在していることを確認した。さらに、加恵が家制度における姑という身分と同一化するように描かれている原作に対して、映画の結末における円環構造は、一度は忘却した於継への愛の蘇生を示唆するものであり、女同士の絆を前景化させていることを指摘した。

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