抄録
本研究では,異なる2つの薬剤を比較する調査や研究において,再発事象の正確な発現時間データの収集が困難な場合を想定し時間依存性共変量を伴う再発事象データを区間ごとの再発回数データとして収集し,周辺尤度あるいは全尤度に基づき解析する場合の薬剤効果を表すパラメータの推定における効率について検討した.時間依存性共変量が観測される時点は1時点とし治療期間を2つまたは3つの区間に分割することとした.治療期間を2分割する場合では,周辺尤度に基づく研究から,時間依存性共変量が観測される時点を分割点とすることでバイアスをほとんど伴わない推定が行え,パラメータ推定の効率が最も高くなることが示唆された.治療期間を3分割する場合については,時間依存性共変量が治療期間の中央で観測されるデザインに限定し治療期間前半を2等分する場合,治療期間後半を2等分する場合,治療期間を3等分する場合(周辺尤度の場合)の各分割方法における効率の比較を行った.その結果,全尤度及び周辺尤度のいずれにおいても,時間依存性共変量が観測される時点を分割点に含む治療期間前半を2等分する分割方法で効率が高くなることが示唆された.