計算機統計学
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一般化線形モデルにおけるPearsonカイ2乗統計量と偏分
松尾 精彦
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1990 年 3 巻 1 号 p. 55-71

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抄録
Nelder & Wedderburn (1972)により提案された一般化線形モデル(Generalized linear models)は,比率データに対するロジスティック線形モデルや分割表に対する対数線形モデルといった重要なモデルをその代表的なモデルとして含むように,正規線形モデルを一般化したものである.この一般化に伴う理論上・計算上の複雑化が,獲得した一般性に比べ軽微だったことも今日の一般化線形モデルの発展に大きく寄与しているといえる.その後,正規線形モデルと同様の方向での拡張がなされ,また同様の手法が適用されてきているが,正規線形モデルの場合に比べ理論展開の明快さ・厳密さに欠けるのが実情である.数多くの場面で,このことは残差の問題として捉えることができる.つまり,正規線形モデルでは残差が一意的に決定され,それが極めて有用であるのに対し,一般化線形モデルではもはや同等の働きをする量が存在しなくなり,そのことにより生起する問題が数多くある.この報告では,一般化線形モデルにおいてよく用いられるPearson残差および偏分(deviance)残差を比較検討することにより問題点を明確にし,議論の厳密化をはかる.
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© 1990 日本計算機統計学会
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