抄録
大規模データを対象としたランキングと選択のための方法として, 近年, Henderson & Newton (2016) は, 対象となる上位のユニットを最も正確に選択するための指標として, P値, Q値に類するR値という指標を新たに提案している. しかし, R値は, モデルの妥当性に依存する指標であるため, モデルの誤特定による影響を強く受ける可能性がある. 本研究では, 特に, 医学・生物学における大規模データの解析を目的として, Bradley Efronらによって開発された混合モデルに基づく枠組みを用いたベイズ流階層混合モデルを応用して, R値による正確なランキングを行うための方法を提案する. 特に, 柔軟なモデル化を可能とするために, Lairdのノンパラメトリック最尤法を用いた経験ベイズ法を用いる. また, 混合モデルによる枠組みを用いることにより, 選択されたユニットのFDR (false discovery rate) を推定することも可能となる. M. D. Anderson Cancer Centerで行われた乳がんの臨床研究を事例として, 提案した方法の有用性の評価を行う.